トイレは無料か?~注文前のトイレ利用の可否とスターバックスコーヒーの対応~

 
アメリカのスターバックスの店舗にて、黒人2人が注文をせずにトイレを利用したことに対して、店員がこれを問題視し、警察を呼び逮捕に至ったとの報道がありました。
 
 
この報道を見て、いくつか思うところがあります。
 
まず、①飲食店等において注文等せずにトイレを利用することは許されるのか、
 
次に、②店員が問題視したことは黒人差別意識によるものなのか、
 
最後に、③警察が逮捕するに至った理由(何の罪を根拠としているのか)
 
です。
 
 
①の点は、飲食店等には、注文客以外にも無償で自由にトイレを利用させる義務はありません。その意味では注文をせずにトイレのみ利用して退店することは問題です。ただ、現在の飲食店等においては、トイレを含めて自由な出入りが可能な店舗が非常に多く、また、注文せずにトイレのみを利用して退店するケースは非常に多いのが実情です。
 
そして、店舗側もそのことを承知しつつ、あえて問題視していないことが多いです。
 
そのようなトイレ利用を拒否したい店舗であれば、トイレ利用のみはお断りとの掲示をしたり、トイレ利用の際に店員への声掛けを求めたりすることがあります。
 
そうすると、現代社会の多くの飲食店等では、事実上、トイレのみの利用をいわば「黙認」していると言っても過言ではなく、トイレのみを利用したからといって、さほどの追及を受けることは通常ありません。
 
 
だからこそ、本件での店員の対応については、②にあるように、差別意識ゆえになされた行動と非難を受けるのです。
 
 
その上で、③の点ですが、日本の刑法で考えてみると、「建造物侵入罪」もしくは「不退去罪」の適否が考えられます。前者は、違法に建物に侵入したことが条件ですが、本件でのトイレのみ利用が「違法」となれば適用の余地があります。
 
しかし、上記のとおり、本件でトイレのみ利用が違法とされることは考え難いです。
 
不退去罪については、建物の管理権者が退去を求めたのに違法にこれに応じないことが条件です。
 
本件でも、店員が黒人2人に対して退去を求めたが違法に居座ったとなると成立の余地があります。
 
しかし、報道によれば、黒人2人は友人を店で待っていたともあり、そうすると単なる待ち合わせ客ですから、合流後に注文がされると予想されます。そうであれば違法に居座ったとは言い難く、実際には不退去罪の適用も難しいのではないでしょうか。
 
 
結局、あらゆる観点から、この度の店員の対応には問題があったといえます。
 
実査、本件に対しては抗議行動が起き、スターバックスの全店舗にて研修のため営業を一時、一斉に自粛するという始末に至っています。
 
 
 
 
 
 
 
 
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