ベルばらのパロディと著作権侵害の成否

ベルばらの著作者の事務所が、札幌市の「広報さっぽろ」6月号に掲載したイラストが、ベルサイユのばらの著作権を侵害するとして、同市に抗議したとのことです。
(2018年7月5日 日経新聞)
 
報道によると、同市は、公共マナーに関する特集の中で、「マナー・シラントワネット」「オシカル」なる人物を登場させ、マナーについての記事を作成していたようです。
 
前者は「マリー・アントワネット」、後者は「オスカル」というベルばらの登場人物を容易に連想させるものだったようです。
 
 
さて、この問題は、同市の作ったキャラクターがベルばらのパロディになるかどうか、ということとパロディになるとして著作権法上どのような問題になるかということです。
 
まず、私は同市のイラスト自体は見ていませんが、どうにもベルばらのパロディとして作られているようなので、以下、パロディという前提で話を進めます。
 
パロディに当たるとして、問題はパロディについて現行の著作権法にはパロディについて具体的に定めた規定がないことです。
 
とはいえ、パロディは他人の著作物を変形したり、加工するという側面があるので、その意味で著作権法27条に定める翻案、変形に該当し、許されないことにもなりそうです。
 
 
裁判例では著名なものがいくつかありますが、モンタージュ写真事件では、一定の場合にパロディは許される余地を認めつつ、許される余地を限定しています。
すなわち、世の中のあらゆる著作物は、およそ他人の著作物をも念頭に作成されているので、パロディ自体がまったく許されないことにはならないが、パロディした部分がメインになってはいけないということです。
 
そのように考えると、本件で札幌市の作成したイラストはどうやら全面的にベルばらのパロディとして構成されているのだと思います。
 
著作者が抗議するのはもっともだといえそうです。
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