あおり運転デマ投稿に対する責任について~インターネット名誉棄損投稿に伴う刑事責任や民事責任、投稿の対象となった企業の補償について~

神奈川県の東名高速道路で2017年6月、あおり運転を受けた夫婦が死亡した事故を巡り、被告の勤務先としてインターネットにデマを投稿し、北九州市の建設会社の名誉を傷つけたとして、名誉毀損罪に問われた埼玉県川越市の小売店従業員、杉浦明広被告(53)の判決で、福岡地裁小倉支部は10日、無罪主張を退け、求刑通り罰金30万円を言い渡した。

(日経新聞電子版2020年12月10日 22:24)
 
昨今、繰り返されるあおり運転と、インターネット名誉棄損の問題とが同時に話題となった事件です。
本件は、あおり運転の加害者の勤務先がとある建設会社であるという趣旨の投稿をした投稿者(以下「Aさん」といいます。)に対する刑事責任が問われた裁判です。
 
判決では、罰金30万円の有罪判決が言い渡されたとあります。また、投稿者である被告人はどうやら無罪の主張をしていたものの、退けられたようです。
また、上記報道の続きを読むと、他にも男性5人(以下「BないしFさん」といいます。)が罰金30万円の略式命令を受けたこと、検察審査会の審査を踏まえ、もうひとり別の男性(以下「Gさん」といいます。)についても強制起訴になっていることが報じられています。
 
 
本件のあおり運転は世間を大きく騒がせ、SNSでも一般人による多数の投稿が繰り返されました。そのうち、上記のAさんないしGさんについて、それぞれ刑事責任が問われたということです。
そして、BないしFさんは「略式命令による罰金30万円」となっており、これは、「事実を認め、投稿した内容が名誉棄損に該当することを前提に略式命令という正式裁判より簡易な裁判にて罰金の支払を命じられた」ことを意味します。
 
他方で冒頭のAさんは、いわゆる「正式裁判での罰金30万円」です。これは、BないしFさんと異なり、「犯罪の対象となるとして検察官が主張する事実や法律の適用を巡り、これを争ったものの、その無罪主張は採用されず、罰金30万円の支払いを命じられた」ことを意味します。
報道にあるように、Aさんは、無罪主張をしたようなので、事実を認めることを前提とした「略式裁判」ではなく、「正式裁判」で審理されたということです。
 
Aさんに対する判決も、BないしFさんに対する判決も罰金30万円という結論は同じですが、結論に至る過程に大きな違いがあります。
 
 
さらにGさんについては、いったんは不起訴とされたものの、かかる検察官の判断に対して検察審査会が審議をした結果、2度に渡り起訴が相当との議決がされた場合に、当該被疑者について起訴されるというものです。
これは、本来、被疑者を起訴するか否かの判断が検察官の専権とされていることの例外であり、今回の事件では検察審査会が2度に渡り、起訴が相当と判断し、かかる結論に至ったものです。
 
 
ところで、デマを流された建設会社は、デマのために苦情が殺到し、休業を余儀なくされたとあります。デマの投稿者に対する刑事責任は当然として、民事の損害賠償も求めたいところです。
この点、名誉棄損そのものに対する補償と、休業損害に対する補償とが考えらえます。
 
まず、会社に対する名誉棄損として、その慰謝料、謝罪広告、デマ投稿の削除に要した弁護士費用などを請求することが可能です。
また、休業損害に対する補償としては、休業一日あたりいくらの損害になるかを従前の売上などから計算して請求可能です。
 
本件では、デマの投稿者が多数なのでどの人にいくらを請求するかなど工夫も必要です。
 
 
以上、本件デマ投稿については刑事民事上、多様な問題を含んでおり、適切な対処が重要な事案だと考えます。
 
 
 
 
 
 
 
 
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