弁当の用意が遅れた際のキャンセルの当否

広島東洋カープナインが地元の飲食店を手助けした。25日のマツダスタジアムでの練習後、土生翔平スコアラーが昼食のため球場付近にあるなじみの弁当店へ。そこで直前に78食分のキャンセルが出たことを聞き付けると、岩本貴裕スコアラーに相談し、ロッカールームで帰る準備をする選手に連絡。希望者を募り、キャンセル分の多くを購入した。60代の女性店主によると、約束の時間より20分以上、弁当が出来上がるのが遅れたため、キャンセルされたという。

(中国新聞デジタル2021・7・25より)

 

弁当を大量に注文していたが、用意が遅れたことを理由にキャンセルされてしまったことに関し、カープの選手が弁当店を助けたという報道です。カープの選手の心意気は見習うべきところがあると思いますが、はてさて、そもそも予約した人による「キャンセル」は法的に見て正当なのでしょうか?

 

この点、弁当の予約は、弁当店と予約者との間での「弁当の購入契約」に該当します。予約者が注文し、これを弁当店が受けた時点で当該契約は成立し、弁当店は注文された個数の弁当を用意し、予約者に引き渡す義務を負い、他方で予約者はその代金を支払う義務を負います。

 

問題は、弁当を「何日の何時までに」用意してもらうことになっていたのかです。

予約者としては当該時間までに用意をしてもらわないと契約の目的を達成できないケースがあり得るので(たとえば時間までに用意してもらわないと持ち帰れないとか、弁当を食べるための時間に間に合わないなど)、弁当店との間でこの点を明確にして合意の内容としていたのであれば弁当のキャンセル(すなわち売買契約の解除)がなし得ます。

 

具体的には、民法542条1項4号には「契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。」と規定しているので、この規定に照らした解除の余地が生じるのです。

 

 なので本件においては予約者と弁当店との間で、厳密に「何時何分までに用意してもらわないと困る」とのことであれば解除がとおり、予約者自体の行為に何ら責められるべき問題はないこととなります。ただし、本件では用意が遅れたのが「20分以上」とのことなので、本当にこの程度の遅延で「契約をした目的を達することができない場合」に該当するかどうかの検証は必要になると思います。

 

 

 

 

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