従業員の採用から退職までの労基法の定めを教えてください。
労働基準法では、労働者(従業員)の採用から退職まで条文にて詳細に定めがあります。その中で中心的な規定を以下のとおり抜粋するのでご参照ください。大切なことは、「職場の慣行ではこうなっている」では通らないことが多々ある点です。最終的には強行法規である労基法が優先する規定も多々あるのでご注意ください。
0 基本原則(労基法1条、2条)
第一条
労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
第二条
労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
1 労働条件の明示(労基法15条)
第十五条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
・制服の買取?
→明示していればOK(労基法施行規則5条1項6号)
2 賠償予定の禁止(労基法16条)
第十六条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
・ノルマ未達成の場合のペナルティ?
→違法(6月以下の懲役または30万円以下の罰金・労基法119条1号)
3 賃金全額払いの原則(労基法24条)
第二十四条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
・損害賠償との相殺
→違法(30万円以下の罰金・労基法120条1号)
4 減給の制裁(労基法91条)
第九十一条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
5 賃金の計算単位(行政通達)
行政通達(昭63・3・14基発第150号)
時間外労働および休日労働、深夜労働の1ヵ月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。
6 解雇制限(労基法19条)
第十九条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
7 解雇予告(労基法20条)
第二十条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
8 解雇無効(労働契約法16条)
第十六条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
9 退職時の証明
第二十二条
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。