著作権問題にお悩みの方へ

【目次】
1 著作権とは何か
 ⑴はじめに
 ⑵著作物について
 ⑶著作権者について
 ⑷著作権者の権利の内容について
 ⑸①著作者人格権とは
 ⑹②著作権とは
 
2 著作権侵害が認められるための要件について
 ⑴著作権侵害の要件について
 ⑵①著作物について著作者の著作権を侵害する行為があること
 ⑶②その侵害行為について著作権法上の制限が及ばないこと
 
3 著作権侵害を受けた場合の対応について
 
4 自分の著作物を守るために必要なこと
 
【本文】
1 著作権とは何か
 ⑴はじめに
 著作権とは、著作者が著作物に対して有する権利の総称です。そのため、著作権を理解するためにはまず、「著作物」とは何か、「著作者」とは誰かを理解することが必要になります。
 
 ⑵著作物について
 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とされています(著作権法2条1項1号)。
 そのため、事実やデータは「思想又は感情」に該当せず、著作物にあたりません。また、アイデア自体はそれが外部に具体的に「表現」されないと著作物に該当しません。さらに、小説や曲のタイトルは一般的には短いことから創作的とはいえないとして、やはり著作物にあたらないと考えられています。
 以上を前提に、著作物にあたらないとされるもの以外にはプロによるものであろうと、素人や個人によるものであろうと広く著作物として認められるのです。
 
 ⑶著作権者について
 著作権者とは、「著作物を創作する者をいう。」とされています(著作権法2条1項2号)。
 したがって、著作物を創作すればすぐにその著作物についての著作権者となります。
 
 ⑷著作権者の権利の内容について
 以上のように著作権法の理解に際しては、まず著作物該当性が問題となり、次に当該著作物の著作者が誰かが問題となります。
 こうして著作者が特定された上で、具体的な著作権の内容について検討をすることとなりますが、まず前提として、著作者が有する権利には、①著作者人格権②著作権の二つがあることを理解する必要があります。
 
 ⑸①著作者人格権とは
 著作者人格権とは、著作者がその著作物に対して持つ、自己の人格を尊重する権利のことを指します。著作者の人格的利益を保護する権利とされています。
その内容としては、①公表権(著作権法18条)、②氏名表示権(著作権法19条)、③同一性保持権(著作権法20条)などがあります。
 まず、①公表権とは、著作者が、自分が創作した著作物のうち、まだ公表されていないものを公表する権利を有するということです。著作者は、自らが創造した著作物について、いつ、どのようにして公表をするのかもしくはしないのかを含めて自ら決定する権利を持つということです。
 次に、②氏名表示権とは、著作物に著作者の氏名を表示する権利のことであり、一般的には「著者名義表示権」とも呼ばれます。
 続いて、③同一性保持権とは、著作者が作品の内容・形式を守る権利のことであり、著作者が、作品が自分の思い描いたものと同じ形で公表されることを求める権利です。例えば、著作物を改変・切り取り・編集することは、著作者の同一性保持権に反する行為とされます。
 
 ⑹②著作権とは
 著作権とは、著作物に対して著作権者が有する権利の総称であり、その内容としては、下記のとおり多様なものが含まれます。著作権は、著作物の利用を許諾したり禁止したりする権利とされています。
 
 ①複製権(21条);著作物を印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製する権利
 ②上演権・演奏権(22条);著作物を公に上演し,演奏する権利
 上映権(22条の2) 著作物を公に上映する権利
 ③公衆送信権等(23条);著作物を公衆送信し,あるいは,公衆送信された著作物を公に伝達する権利
 ④口述権(24条);著作物を口頭で公に伝える権利
 ⑤展示権(25条);美術の著作物又は未発行の写真の著作物を原作品により公に展示する権利
 ⑥頒布権(26条);映画の著作物をその複製物の譲渡又は貸与により公衆に提供する権利
 ⑦譲渡権(26条の2);映画の著作物を除く著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利(一旦適法に譲渡された著作物のその後の譲渡には,譲渡権が及ばない)
 ⑧貸与権(26条の3);映画の著作物を除く著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利
 ⑨翻訳権・翻案権等(27条);著作物を翻訳し,編曲し,変形し,脚色し,映画化し,その他翻案する権利
 ⑩二次的著作物の利用に関する権利(28条);翻訳物,翻案物などの二次的著作物を利用する権
 
2 著作権侵害が認められるための要件について
 ⑴著作権侵害の要件について
 著作権侵害が成立するためには、①著作物について著作者の著作権を侵害する行為があること、②その侵害行為について著作権法上の制限が及ばないことが必要です。
 この著作権法上の制限についてですが、著作権は自ら創作した著作物に対して広い保障を与える権利である反面、著作権法は著作物の利用に際して一定の範囲で著作権の制限を設け、その範囲内における著作物の自由な利用を認めているのです。
 そのため、著作権侵害の成否を判断するに際しては、この著作権の制限規定についての理解もまた不可欠となります。
 
 ⑵①著作物について著作者の著作権を侵害する行為があること
 著作権の内容は上記のとおりであるところ、当該著作物について著作権者の許諾なくこれを複製すれば複製権侵害になります。たとえば他人の小説を勝手にコピーしてネットで公開すれば複製権侵害が成立します。
 他人の制作したイラストをコピーして、何か商品を作って販売したような場合も同様に複製権侵害になります。
 その他、著作権は多様な態様での権利保障があるので、他人の著作物を利用する際には注意が必要です。当然、著作物の利用に関して著作権者の同意や了解がある場合には著作権侵害にはなりません。
  
 ⑶②その侵害行為について著作権法上の制限が及ばないこと
 以上のように、他人の著作権を侵害しかねない場合でも、著作権法上の制限に該当する場合には権利侵害は成立しません。
 この著作権法上の制限についても以下のように非常に多様なものがあります。これらの中で頻繁に用いられるのは、①私的使用のための複製、②図書館等における複製、③引用です。
 したがって、他人の著作物を利用するに際してはまずはこれらの著作権法上の制限に該当するかどうかを確認することが多いです。
 
①私的使用のための複製(著作権法30条)
 家庭内で仕事以外の目的のために使用するためであれば著作物の複製が許されています。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできます。
 ただし、映画についてはこの例外規定は適用されません(映画の盗撮の防止に関する法律)。 
 
②図書館等における複製(著作権法31条)
 国立国会図書館と政令(施行令第1条の3)で認められた図書館に限り、一定の条件の下に複製が認められています。
 
③引用(第32条)
 ・公正な慣行に合致すること
 ・引用の目的上,正当な範囲内で行われること
 を条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができます。
 
④教科用図書等への掲載(著作権法33条)
 学校教育の目的上必要と認められる限度で教科書に掲載することができます。
 
⑤教科用拡大図書等の作成のための複製等(著作権法33条の2)
 
⑥学校教育番組の放送等(著作権法34条)
 
⑦教育機関における複製等(著作権法35条)
 教育を担任する者やその授業を受ける者(学習者)は,授業の過程で使用するために著作物を複製することができる。
 ただし,ドリル,ワークブックの複製や,授業の目的を超えた放送番組のライブラリー化など,著作権者に不当に経済的不利益を与えるおそれがある場合には、この例外規定は適用されない。
 
⑧試験問題としての複製等(著作権法36条)
 入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製すること,インターネット等を利用して試験を行う際には公衆送信することができる。
 
⑨視覚障害者等のための複製等(著作権法37条)
 
⑩聴覚障害者のための自動公衆送信(著作権法37条の2)  政令
 
⑪営利を目的としない上演等(著作権法38条)
 
⑫時事問題に関する論説の転載等(第39条)
 新聞,雑誌に掲載された時事問題に関する論説は,利用を禁ずる旨の表示がない限り,他の新聞,雑誌に掲載したり,放送したりすることができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。
 
⑬政治上の演説等の利用(第40条)
 
⑭時事の事件の報道のための利用(第41条)
 著作物に関する時事の事件を報道するために,その著作物を利用する場合,又は事件の過程において著作物が見られ,若しくは聞かれる場合にはその著作物を利用できる。同様の目的であれば,翻訳もできる。 
 
⑮裁判手続等における複製(第42条)
 
⑯国立国会図書館法によるインターネット資料収集のための複製
(第42条の3)
 
⑰放送事業者等による一時的固定(第44条)
 
⑱美術の著作物等の原作品の所有者による展示(第45条)  
 
⑲公開の美術の著作物等の利用(第46条)
 
⑳美術の著作物等の展示に伴う複製(第47条)
 
㉑美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(第47条の2)  
 
㉒プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(第47条の3)
 
㉓保守,修理等のための一時的複製(第47条の4)
 
㉔送信の障害の防止等のための複製(第47条の5)
 
㉕送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(第47条の6)
 
㉖情報解析のための複製等(第47条の7)
 
㉗電子計算機における著作物の利用に伴う複製(第47条の8)  
 
3 著作権侵害を受けた場合の対応について
 以上を前提に、自分の著作権が侵害された場合には、相手方を特定し、著作物の利用差止、損害賠償、刑事告訴という手法をとることが考えられます。
 
4 自分の著作物を守るために必要なこと
 著作権は、自分の知らないところでまったく見も知らない人に勝手に使われることで侵害されるのが通常です。とりわけ、ネットの利用が非常に普及した現代社会においては、クリエイターによる著作物がネットを通じて公開されることも多いため、著作権侵害がネット上で広く拡散することもあります。
 そうした事態を防ぐには、自分の著作物をネット上に無制限に公開しないこと、著作権の譲渡の際にはきちんと契約書を作成すること、少しでも著作権侵害行為が判明した場合にはすぐに弁護士へ相談し、適切な対応をとることが大切です。
 
 
執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)
 
1979年 東京都生まれ
2002年 早稲田大学法学部卒業
2006年 司法試験合格
2008年 岡山弁護士会に登録
2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所
2015年 弁護士法人に組織変更
2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更
2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所
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