1 会社への誹謗中傷とは?
インターネットの普及、SNSの普及に伴い、誹謗中傷という言葉が広まりました。
その結果、個人であっても、企業であっても、この誹謗中傷という行為を意識しないで生活をしたり、事業活動を行ったりすることが困難な時代になりました。
ところでこの誹謗中傷という言葉ですが、その意味としては、「誹謗」という言葉と「中傷」という言葉が合わさった言葉です。
その意味としては、「根拠のない悪口で他人を傷つけること」を意味します。当然、ここに言うところの「他人」には法人である企業も含む余地があります。
そのため、会社、企業に対しても誹謗中傷の問題は生じますし、生じた問題に対する対処も必要になります。
具体的には、Googleマップやぐるなび、食べログなどの口コミサイト、転職サイト、個人によるインスタ、YouTube、ブログやXなどのSNSを通じた投稿により会社、企業の誹謗中傷被害に遭うことがあります。
なお、誹謗中傷とその法的責任については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
2 会社への誹謗中傷を放置するリスク
以上のような誹謗中傷行為を放置すると具体的に企業にとってどのようなリスクがあるでしょうか?
第1に、典型的なところとしては顧客からの評価や信用の低下に伴う収益の減少が挙げられます。風評被害はいったん生じてしまうと生じた被害を回復することが容易でない問題です。
そして、風評被害の結果としては、最悪の場合には不買行動や不買運動になったり、顧客離れに繋がったりします。
そのため、ただの書き込みや悪口程度に捉えるのではなく、すみやかに対策をとることが求められます。
第2に、企業のブランド価値の低下とそれに伴う従業員の士気の低下や応募の減少が挙げられます。
企業活動は長年に渡る積み重ねの結果、現在の状況があり、その現在の状況を踏まえて将来に渡り企業価値を維持、向上させていくものです。
従業員はそうした企業価値やブランド価値を見出して企業に勤め、所属し、成果を上げてくれるものです。
また、当該企業に就職を希望する人もまた、このような企業価値やブランド価値を見出して応募をするものです。
ところが、いったん企業が風評被害に遭うと、そのような企業価値やブランド価値は毀損され、従業員の士気の低下や離職に繋がり、新規採用においても不利な結果に繋がりかねないのです。
こうした実情に照らすと、風評被害は何よりも最優先で解決すべき企業の課題の一つという事ができます。ましてや生じた風評被害を放置することは、いつまでも企業価値の低下を許し続けることになりかねません。
3 従業員による誹謗中傷
(1)従業員による誹謗中傷について
最近ではモラルや士気の低下した従業員によるSNSや転職サイトなどでの悪質な投稿も目に余るところです。
まさか自社の従業員により誹謗中傷等の行為がなされるなどと思いもしなかったところ、そのような事態に陥ると、外部の第三者からの誹謗中傷よりも一層、炎上し易く話題になりやすいという特徴があります。
これは現職の従業員ではなく、退職をした従業員においても同様です。
(2)従業員による誹謗中傷とその影響とは?
こうした従業員による誹謗中傷は、企業の教育体制や企業の体質に問題があることも少なくないこと、投稿を見た第三者も一定割合でそのように考えがちであることから、顧客離れの大きな要因となりかねません。
当然、投稿の内容によっては一時的な営業停止も避けられません。
(3)従業員による誹謗中傷に対する対策①~労働条件の確保~
従業員による誹謗中傷の大きな原因は、当該企業や会社、上司に対する不平や不満であったり、企業内におけるコンプライアンス意識の低下であったりします。
そのため、そもそも従業員による誹謗中傷を起こさせないためには、これらの問題を解決しておくことが重要です。
すなわち、企業においてはまず何よりもしっかりとした労働条件通知書を作成し、採用、雇用の際に従業員に説明の上で交付することが大切です。
当然、その条件に従った労務管理をし、正しく計算された賃金を支払うことが必要です。サービス残業や過度なノルマ設定は授業インの士気の低下にすぐに繋がるので避けるべきです。
また、労働条件通知書の他に就業規則の作成と閲覧の機会の確保も重要です。
従業員は自分の労働力を割いて企業に貢献する立場にあることから、就業規則においても労働力に見合った労働条件が明示されていることが重要となります。
(4)従業員による誹謗中傷に対する対策②~ハラスメント対策~
他にも、上司などによるパワハラやモラハラなどのハラスメントの問題は従業員に負担をかけ、不満を募らせる大きな原因となることから、日ごろからハラスメント研修を徹底し、ハラスメント相談窓口を設け、生じたハラスメントに対しては従業員を守るというスタンスで対応をとることが必要です。
(5)従業員による誹謗中傷に対する対策③~顧問弁護士の活用~
以上のような観点から企業としても対策をとることが重要になりますが、加えるのであれば顧問弁護士による労務管理の徹底を行ってもらうことがベストだと言えます。
未だに日本の多くの企業では上記のような労働条件通知書の作成や交付も十分でないですし、就業規則の作成等も同様です。
その意味では労務問題に詳しい顧問弁護士との顧問契約の締結は、従業員の労務管理のため、ひいては従業員による誹謗中傷リスクを抑えるためにも非常に有効です。
そして、顧問弁護士との契約をした際には、企業内でそのことを周知し、万が一誹謗中傷があった際には顧問弁護士に相談することとなっているということを周知してもらうのが良いと思います。
そうすることで、従業員としても、仮に自分が何か書き込みをした場合にはすぐに顧問弁護士を通じて特定がされてしまうと考え、書き込み自体を躊躇することになると言えます。
また、当事務所の顧問契約のプランの中には、企業における研修講師が含まれているものもあります。これを活用して頂き、誹謗中傷問題の研修を実施してもらうことでもリスク低減につなげることが可能だと考えています。
(6)従業員に対する責任追及の方法とは?
以上のように、従業員による誹謗中傷はそもそも生じさせないに越したことはありません。
しかし、多数の従業員を採用する企業であればあるほど、従業員による風評被害の可能性は高まります。
そのため、事後的に風評被害に対して対応をとることが求められますが、その場合に方法としては以下のとおりです。なお、削除や発信者情報開示の手続については次の項目で説明するのでここでは省略します。
①懲戒処分
②民事上の責任追及(損害賠償請求)
③刑事告訴
まず、①の懲戒処分については、誹謗中傷行為は企業に対する背信行為の最たるものの一つと言え、これを理由とした解雇は解雇に正当な理由があるとされやすいと考えられます。よって、解雇を念頭においた方針検討をすることとなります。
次に②については、風評被害の程度に応じて企業に生じた具体的損害を従業員に請求することとなります。当然、営業損害を含む請求になります。
最後に③刑事告訴ですが、懲戒処分や民事上の責任追及では企業として納得できない場合には刑事責任の追及のために刑事告訴を検討するようになります。誹謗中傷行為の内容が名誉棄損罪や侮辱罪、業務妨害罪に該当するような場合には検討の余地があります。
ただし、法人に対しては、侮辱罪は成立しないので、誹謗中傷の内容が個人に向けられたものである場合に限る点、注意が必要です。
4 顧客からの誹謗中傷
(1)顧客による誹謗中傷について
企業と何らかの接点を持った顧客からSNSなどを通じて誹謗中傷を受けることがあります。このような場合では、多くは当該顧客が当該企業のサービス等に何らかの不満を感じての投稿であることが通常です。
そのため、企業としては、その不満の根拠となる何らかの原因が自社にあるといえるのかどうかをまずはきちんと検証することが大切です。
このような、企業と接点を持った顧客からの誹謗中傷とは別に、何らの接点も持たない第三者から誹謗中傷を受けることもあります。
これは企業について広まった噂や風評被害に乗じて、自分は当該企業と何らの関わりもないのに書き込みをするケースです。
以上のような顧客による風評に対して取り得る手段は次の通りです。
①書き込みに対して個別に返信をする
②書き込みに対する削除を申請する(投稿内容の削除請求)
③書き込みをした人物を特定する(発信者情報開示請求)
④特定された人物に対して損害賠償を求める(損害賠償請求)
以下、順に説明をします。
(2)①書き込みに対して個別に返信をする
Googleマップなどを中心とした媒体の場合には、顧客からの書き込みに対してアカウント管理者の方で個別の返信をすることが可能です。
また、Xにおいても投稿に対するコメントないし返信が可能です。
したがって、誹謗中傷に対してすぐにできる対応策としては、当該誹謗中傷に対して、企業としての認識等を返信することが考えられます。
その際には返信の内容について慎重に慎重を期す必要があります。ここでの返信内容で失敗するとかえって炎上を招きかねません。
具体的にどのような返信方法がふさわしいかは別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
(3)②書き込みに対する削除を申請する(投稿内容の削除請求)
次に、書き込みに対する削除を申請することが考えられます。
削除については任意での請求と、法的手続きを通じての請求とが考えられます。
この点、Googleマップへの書き込みに対しての削除の方法は以下別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
Googleの口コミや誹謗中傷を弁護士・法律事務所に依頼して削除する方法
また、爆サイに対する削除は以下のページをご参照ください。
その他に削除一般の説明は以下のページをご参照ください。
(4)③書き込みをした人物を特定する(発信者情報開示請求)
さらに続いて、削除にとどまらず書き込みをした人物を特定することが考えられます。
企業としては、削除だけでは最終的な書き込みをした人物の特定に繋がらず、企業としてのけじめがつかないとか、再発防止が図れないということで発信者情報開示を行うことも少なくないと言えます。
これは企業としての価値を維持し、従業員の士気を保つためには必要なことだと言えることからきちんとした取り組みが求められる問題です。
この点、発信者情報開示の手続については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
(5)④特定された人物に対して損害賠償を求める(損害賠償請求)
発信者情報開示の結果、投稿者の特定が実現した後には、当該投稿者に対して損害賠償を求めることが考えられます。
実際に損害賠償として何をどのような方法で求めることが可能かは別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
5 弁護士による風評被害・誹謗中傷対応
以上のような風評被害・誹謗中傷対応は、インターネットの問題に詳しい、経験のある弁護士でないと思うような結論に至らないことがあります。
また、日ごろ、どのタイミングで生じるか分からない問題でもあることから即座に適切な相談がきる弁護士を見つけておくことも重要です。
企業としては自社に何ら落ち度がないのに、費用をかけて対応をとることに納得がいかないこともあるかと思います。
しかし、これだけインターネットとSNSが広く普及した現代においては、避けることのできない企業コストになってきているとご認識いただく方がよいかと思います。
これは企業としてインターネットやSNSを活用して企業活動の広報や周知、キャンペーンをすることで自社の利益を図っていることの裏腹の問題ともいえるのです。
すなわち、インターネットやSNSが企業活動にとって切手も切り離せない以上は誹謗中傷の問題も当然のようについて回るということです。
とはいえ、何もせずに書き込みされるのを放置せよということではなく、事前、事後に最適な対応をとることで損害を未然に防いだり、最小限に抑えたり場合によっては投稿者に損害賠償を求めることが可能となるのです。
そのためにはこの分野に詳しい弁護士にご相談を頂くこと、活用いただくことをお勧めします。
6 まずは弁護士にご相談ください
ある日突然、企業に対する風評被害がなされたと分かったらすぐに弁護士にご相談ください。
風評被害はいったんなされると削除されるまでその投稿が残り続けます。不特定多数の人物に閲覧される可能性のあるネット上の書き込みに対してすぐに対応をとらない理由はありません。
当事務所であれば風評被害の対策に知識経験があることから、状況に応じた最善の解決策をご提示可能です。
また、将来に渡り誹謗中傷を可能な限り抑えたいとお考えの企業には、そのための対策プランのご提示が可能です。
顧問契約を含めて弁護士の活用をご検討ください。