介護・福祉業

1 介護・福祉業の概況について

介護・福祉業とは、高齢者や身体障がい者、精神障がい者など他者からの心身のケアや介助が必要な人に対して、これらのケアや介助を提供する事業です。

そのため、高齢者介護に限らずこれらの事業はすべて介護・福祉業に含まれます。

そして、在宅サービス、施設サービス、地域密着型サービス等の中でさら被介護者のニーズに合わせたサービス内容も多種多様です。

介護・福祉業には、法律でケアマネジャー、介護スタッフ(ヘルパー)、介護福祉士等の有資格者の配置を義務付けられていることからも、様々な関係者が事業に携わることになります。

介護・福祉業は、利用者の重症化や人手不足による介護従事者の身体的負担が少なくない一方で、利用者の介護及び状況記録等において近年AIやデジタル機器の導入により作業効率が求められる分野でもあります。

この介護・福祉業においては、特に高齢者介護の点で、これから高齢化社会が進むにつれてニーズが高まり続けると言われています。

介護・福祉業の市場規模は今後も大きくなると考えられ、実際に2000年から2019年の間で介護保険利用者数は約3.3倍に増加しています(厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」)。

介護職員数も平成12年度から平成29年度の間で3倍以上に増えており、年々増加傾向にあります。

他方で、少子化であること、賃金が低いというイメージが強いこと、労働条件が悪いとのイメージも強いことから必要な人材不足に悩まされる事業所、経営者も少なくありません。

こうした問題を抱える介護・福祉業界に対して国は処遇改善を実施し、賃金の上昇が実現し、労働条件が改善傾向にあります。

また、離職率が高いという問題についても、実は離職率は一貫して低下傾向にあるのが実情です。

その他、人材確保に関しては技能実習生の活用なども進んでいるところです。

日頃から利用者と接することから、利用者とのトラブルも生ずる場合もあります。介護事故などが生じた場合には、利用者やそのご家族等への迅速かつ適切な対応が問われます。

なかには、利用者から職員に対する暴力、暴言、セクハラ行為が行われる場合もあります。事業者としては、利用者に生命身体の安全に配慮したサービスを提供しなければならない一方で、職員に対しても安全な労働環境を提供しなければならない義務を負っています。このような場合に、利用者および職員に対する適切な対処が求められます。

2 介護・福祉業の特徴について

介護・福祉業は、高齢化社会に伴い介護・福祉業のニーズは高まる反面、人手不足の影響から介護等の現場は多くの問題を抱えています。具体的には、人手不足の影響による加重労働、サービス残業、ストレスを抱えた従業員による利用者に対する悪質な虐待があります。

介護事故も虐待も行政に対する報告が必要となり、場合によっては行政指導の対象ともなります。当然、事業に対しては大きなマイナスになり得る問題です。

3 介護・福祉業において発生しやすい法的トラブル

こうした介護・福祉業の特徴からは以下のような法律問題が潜在化しているといえます。

①労務問題

介護・福祉業界では、パワハラやセクハラ、未払賃金、解雇などの労務問題が生じがちです。

介護・福祉の現場では従業員同士が緊密な労務を共同して行う関係から、お互いの力関係に基づくパワハラやセクハラが生じやすいのです。

また、長時間労働の現場において、適正な労働時間管理がされていないことに伴う未払い賃金の請求も少なくありません。

さらに、介護・福祉の職に就く従業員は、転職率も低くないことから、退職に伴うトラブルもよく聞かれるところです。

②介護事故

高齢者や障がい者を相手にする事業であることから、介護者による不注意等による介護事故がつきものです。

特に、誤嚥による介護事故は後を絶たず、そのために事業所として、経営者としていかなる注意を尽くしていたかが問題となることが多々あります。

③利用者に対する虐待

介護・福祉の事業所における利用者に対する深刻な虐待事件も全国後を絶ちません。

当然、許されることではありません。このような問題を避けるためには日ごろから労務環境を整えることと、社員教育を徹底することに尽きます。

④利用者や家族からのクレーム

介護・福祉の事業では、利用者は生活上の必要性に基づき当該サービスを利用しています。

また、利用者の他に家族との関係も避けて通れないこと、利用者は容易に介護・福祉サービスの利用を他社に変更し難いことから、生じたクレームは複雑化、長期化することもままあります。

当然、こうしたクレームは無いに越したことはありませんが、生じてしまったクレームに対しては誠実に対処をすることが大切です。

かつ、その際には雇用する従業員にとって負担の少ない形での解決を事業者として確保することも雇用維持のために非常に重要になります。

4 介護・福祉業特有の法的問題への弁護士による対応

以上のような介護・福祉業に対しては、日ごろから顧問弁護士が企業における労務管理のあり方について助言を求めることで問題を未然に防ぐことが可能です。

また、きちんとした労務管理が介護事故を未然に防ぐことにもつながりますし、虐待行為を防ぐことにもつながります。

さらに、仮に介護事故や虐待行為が生じてしまった際にはすみやかな対応が求められることからやはり顧問弁護士の存在や役割は重要だといえます。

なお、介護事故や虐待行為を防ぐためには、日ごろから従業員に対するコンプライアンス意識醸成のための研修が有効です。

この点、当事務所の顧問契約のプランでは、顧問先企業向けの研修を含むものがあるので、ぜひご活用ください。

以上の問題については当然、弁護士によるスポットでの相談や依頼は可能です。その場合には可能な範囲ですみやかに対応をとることとなります。

5 弁護士に依頼するメリット

以上のような介護・福祉業の問題に照らし、必要な助言や対応をその都度とるために、労務問題、介護事故の取り扱い経験のある当事務所にご依頼頂くことは安心して事業を継続するために非常に有効だといえます。

6 まずは弁護士にご相談ください

介護・福祉の現場で生じた各種トラブルは早めに弁護士に相談することをお勧めします。

また、トラブルの未然防止のためには顧問弁護士の研修を含めてご活用いただければ幸いです。