クレーム対応

1 クレーム対応とは?

クレーム対応とは、その名の通り企業に生じたクレームに企業として対応をとること、ひいてはそのクレームを解決することを意味します。

インターネットの普及、SNSの普及に伴い、また顧客の権利意識の高まりや社会常識ないしモラルの低下などを背景に、クレームを付けられ、その対応を求められる件数は増えていると言われています。

そこで、ここではクレーム対応の重要性について、クレーム対応に詳しい弁護士の立場から解説をしたいと思います。

2 「クレーム」とは何か?

(1)クレームという言葉の意味について

クレーム対応について考えるに際しては、その前提として、そもそも「クレーム」とは何かを明らかにする必要があります。

まず、クレームという言葉自体は、商品やサービスに対して不満や不具合を指摘し、改善や対応を求める意見や要求のことを意味します。

この用語から分かるように、そもそもクレームという言葉自体には、「苦情」や「言い掛かり」といった意味自体は含まれていません。すなわち、クレームという言葉自体には「正当なもの」と「不当なもの」の両方が含まれ得るのです。

ただ、一般的にはクレームという言葉を聞くと「何か不当な要求を意味する」ように受け止める傾向が強くなっているように思われます。

このように、クレームという言葉自体には正当な意見や要求も含まれるので、その点、注意が必要です。そして、消費者や顧客からの正当な意見や要求としてのクレームについては、企業が誠心誠意の対応をすることが求められるのは当然です。

(2)不当なクレームについて

以上のクレームの定義に照らし、その中でも不当な意見や要求を含むものが「不当なクレーム」です。

このような不当なクレームに対しては、企業として自社の権利や利益、従業員を守るために最善を尽くすことが求められます。

問題は、この正当なクレームと不当なクレームを如何にして区別し、その後の行動をとるかという点にあります。

(3)正当なクレームと不当なクレームの区別方法は?

このようにクレームの内容には正当なものと不当なものがあるとすると、これらをどう区別するかが重要になります。

【正当なクレームの基準】
この点、正当なクレームは、

①顧客の指摘する事実が正しいこと
②要求内容としても妥当であること
③要求方法としても妥当であること

の3つともが満たされるものです。

たとえば、①企業が販売した商品に不具合という事実があり、②顧客がこの企業に対して、商品の交換という妥当な要求をし、③要求の方法として、電話やメールで穏当な表現により伝えられるような場合です。

この場合には、顧客の求める内容や方法等は完全に正当なものですから、企業としては誠心誠意の対応が必要です。

【不当なクレームの基準】

他方で、不当なクレームは、

①顧客の指摘する事実が正しくない事
②要求内容が不当であること
③要求方法が不当であること

の3つの全部もしくは一部が満たされるものです。

たとえば、①企業が販売した商品に不具合という事実があったとしても、②顧客がこの企業に対して、商品の交換の他に慰謝料や手間賃と称して過剰な金銭要求をしたり、③要求の方法として、電話やメールで頻繁に連絡をしたり、乱暴な表現により伝えられるような場合です。

当然、①そもそも商品に不具合がないのに諸々の要求をする場合も不当なクレームの典型例です。

このような不当なクレームに対しては、企業として毅然とした対応が求められます。

3 正当なクレームと不当なクレームの区別の難しさ

以上のように正当なクレームと不当なクレームの区別を基準化することは容易ですが、問題は日々の業務の現場でこれらを個々の従業員がその場で即座に判断できるかどうかという問題です。

企業が販売ないし提供した商品ないしサービスについて、本当に企業側に落ち度がなかったどうかを事実をもってその場で判断することは実際にはかなり難しい側面を持ちます。

特に、業務の現場でいきなり顧客からのクレームがなされた場合には、パニックになり、冷静な判断ができないことが多いと言えます。

そのため、クレーム対応で重要なことは何よりまずその場で冷静になること、いったん持ち帰っての回答をするよう心掛けることです。その上で上司の判断を仰ぎ、場合によっては弁護士のアドバイスを求めることが重要です。

4 クレームとカスタマーハラスメントの関係について

クレームの定義や判断基準は以上のとおりです。他方で昨今ではクレームとは別に「カスタマーハラスメント」という言葉も非常に良く聞くようになりました。

では、先ほどの「悪質なクレーム」と「カスタマーハラスメント」とは同じなのでしょうか?それともこれらは別のものなのでしょうか?

以下、若干説明をしたいと思います。

まず、クレームというものはそもそも企業に対する「意見や要求」を意味するとご説明しました。

これに対してカスタマーハラスメントというのは、「顧客による嫌がらせ」を意味します。ハラスメントという言葉自体が、「嫌がらせ」を意味し、会社外の顧客によるハラスメントのことを総じてカスタマーハラスメントと言うのです。

そのため、カスタマーハラスメントのうち、企業に対する意見や要求を伴うものが悪質なクレームということができます。

すなわち、カスタマーハラスメントという広い概念の中に悪質なクレームという類型が含まれることとなります。

企業としては、悪質なクレームを含むカスタマーハラスメント全体に対して何らかの対応が必要となります。

5 クレームの現場での初動対応について

以上を前提に、クレームに対する現場での初動対応についてご説明をします。

まず、クレームを求められたその場で顧客に何も対応をしないとか、回答をしないということもできないので、その場で判断できる情報に照らし、必要最小限度の回答や対応をしておくことは必須です。

具体的には、

①不快な思いをさせたことへのお詫び
②今後、内容を確認しての対応としたいこと
③顧客の連絡先の把握

です。

6 クレーム対応について放置するリスク

クレーム対応について放置をすることは企業にとって大きな損失をもたらします。

企業の中には、「ある程度のクレームは仕方がない」とか「クレーム対応に割く時間や費用はもったいない」という発想をしているところもまだ少なくないようです。

しかし、クレームはこれに対応せざるを得ない現場の従業員にとっては非常に大きなストレスです。それにもかかわらず、企業や経営者がクレームに対してしっかりと対応をしてくれないとなると、従業員の士気は下がり、売り上げにも影響をします。当然、離職率にも影響しますし、以後の採用にも影響をします。

せっかく採用に費用をかけ、教育にも費用をかけてきたのに、顧客からのクレーム(とりわけ悪質なクレーム)をきっかけにして大切な従業員を失っているようでは企業の発展は考えられません。

他にも、最近では、クレームはネットやSNSで拡散し、誰でもが目にすることが可能となっていることから、企業のブランド価値にも傷が付きます。

このような意味で、クレームに対してはしっかりとした対応が求められます。

7 弁護士によるクレーム対応

以上のようなクレームに対しては弁護士によるクレーム対応が非常に有益です。

当然、クレームの内容(正当なクレームか不当なクレームか)や、顧客の性質や要求事項、企業の対応力、クレームの深度に応じて個別具体的な弁護士対応が考えられます。

具体的には、以下の通りです。

①クレーム発生時点

この段階では顧客のクレーム内容の正確な把握と事実確認が重要になります。

顧客の求める内容や前提事実をしっかりと把握できるように何をどう確認したらよいかの助言が可能です。

また、これら事実関係をどう証拠化するかの助言も可能です。

②クレームに基づく企業としての回答の時点

初動段階を経て、企業として当該クレームにどう対応するか、回答をするかの段階では、回答方法等を巡ってかえってクレームが悪化、激化しないように意識、工夫することが必要です。

したがって、そのための回答文書の作成や助言、回答の際の説明の仕方などを助言することが可能です。

③回答を踏まえた顧客からの反応を受けた後の時点

企業からの回答に対して顧客からの反応、リアクションによってはさらに企業として対応をしなければならないこともあります。

そして、顧客からの要求がエスカレートするようであれば企業として毅然とした態度をとることも考えられるので、その判断をどうするかを助言することが可能です。

④顧客との折り合いがつかず、過剰な要求等が続いた場合

以上の努力の結果を経ても顧客からの過剰な要求等が続き、悪質な状況が続くようであれば企業としてはこれ以上の対応をするべきではありません。

顧客(厳密には、過剰な悪質クレームを続けるようであればもはや顧客とは言えない)からすると、企業がいつまでも自分の要求に付き合ったりやりとりに応じたりするという状況は自分にとって都合の良い状況なのです。

したがって、企業として尽くせる手段を尽くしたにもかかわらず、顧客からのクレームが続くようであれば、最後通告をした上で後の対応を弁護士に委ねることをご検討ください。

弁護士から内容証明郵便を送付したり、仮処分を申し立てたり、損害賠償を求めたり、刑事告訴をしたりという解決策があり得ます。

⑤クレームが生じないようにするために

このようにクレームはいったん発生すると、多くの従業員を巻き込んで大きな負担やストレスを受ける問題となります。

当然、企業としてのモチベーションや生産性、ブランドや評価は低下します。

そのため、本来であればクレームやカスタマーハラスメントは生じさせないに越したことはありません。

万が一生じてしまった場合でも、できるだけ問題が小さいうちに早期に解決することが望ましいと言えます。

そのような結果に導くためにはクレームやカスタマーハラスメントについて日ごろから研修を重ね、クレームやカスタマーハラスメントが如何にして生じ、如何にして悪質化するのかを学んでおくことが重要です。

そこで、日ごろからクレームやカスタマーハラスメント問題に詳しい弁護士による研修を受けておくことも有効ですし、当事務所の顧問プランであれば顧問先への研修実施が可能です。

8 クレーム対応に関して弁護士に依頼するメリット

クレーム対応は基本的には企業が直接顧客との間で解決すべき問題です。そのため、当初の段階から弁護士が介入することは想定し難い問題です。

ただ、個別の段階や対応に応じて企業が弁護士と緊密に相談をし、助言を求めておくことは非常に重要です。

したがって、企業としては、日ごろから何か起きた際にすぐに助言を求められる弁護士との顧問契約は非常に重要になってきます。

特にクレーム対応はいつ生じるか分からないこと、いったん生じると解決までに継続的な対応が求められること、その場その場での対応が重要であることという特徴があります。

このような特徴に照らすと、やはりスポットでの弁護士への相談よりは顧問契約を交わした弁護士との継続的な相談や助言が有効です。

当然、法的対応をとることになった際にも、専門の弁護士への依頼が重要だと言えます。

9 クレーム対応については当事務所までご相談ください

クレーム対応についてお悩みの企業様はクレーム対応に詳しい当事務所にぜひご相談ください。

クレーム対応で必要なことは迅速な対応、正確な対応、毅然とした対応です。

当事務所であれば、このような対応をとることに長けていますので、クレーム対応でお困りでしたらぜひご相談ください。