「河北新報社の新聞記事の画像を無断で会員制交流サイト(SNS)に転載したとして、仙台中央署は17日、著作権法違反の疑いで、宮城県美里町、契約社員の男性(44)を書類送検した。送検容疑は2021年7月18~23日、河北新報朝刊に掲載された記事をスクリーンショット(画面保存)した画像7点をインスタグラムに無断で転載し、河北新報社の著作権を侵害した疑い。」
(2022年02月17日 11:27河北新報オンラインより)
ちょっと珍しいけれども、まさに今の時代らしい事件です。被疑者は河北新報社の新聞記事をスクリーンショットにしてSNSに転載をしていたところ、かかる転載行為が河北新報社の著作権を侵害するとして書類送検にまで至ったということのようです。
この点、今のデジタル社会では、ネットニュースなどをSNSで拡散することが日常茶飯事なので、かかる拡散行為も著作権侵害になるのか?と感じた方も多いと思います。
この問題については、次のような場合分けが有効です。
(1)URLを張り付けるだけの場合
自身のSNSにネットニュースのURLを張り付けるだけの場合、これは自身の投稿上にニュースサイトのリンクが貼られるだけであり、これを見た人がリンクをクリックすると、当該ニュースサイトが表示されるだけです。
そのため、当該ニュースサイトの内容を無断で複製したりしたことにはならず、著作権侵害にはならないのです。
(2)記事の内容も記載した場合
URLを貼るだけでなく、記事の内容も記載した場合には、これが著作権法上の「引用」の要件を満たす必要があります。
著作権法第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
そのため、まずは「引用」であることをSNSでの投稿の際に明示しないといけません。「引用」箇所とそうでない箇所を明示的に区別することも必要です。他にも、「引用」である以上は、引用部分とそうでない部分との主従関係上、引用した記事の方が主となるような投稿は許されません(引用記事が大半であり、それに対して一言程度コメントをするだけとかは「引用」の要件を満たさない)。
以上を踏まえて本件事件を再度確認すると、被疑者は、河北新報の記事をスクリーンショットにして投稿していたようです。その際に引用であることを明示したとか、引用部分とそうでない部分との主従関係があったとかとはされていません。おそらく、スクリーンショットにした記事だけを延々と張り付けていたように思われます。これに業を煮やした河北新報社の削除要請に応じることもなく執拗に続けたとのことですので(本件についての河北新報社のコメントより)、悪質性が極めて高いと言えます。
河北新報社のコメント↓
https://kahoku.news/articles/20220217khn000038.html
したがって、本件のような事例はあまり聞いたこともなく、通常の方がSNSでURLを張り付けるだけとか、引用であることを明示し、主従も明確にしている場合には著作権法上の問題は生じないのでご安心ください。
他方で、自社のサイトの画像やイラストなどを無断転載されるケースもかなり多く、そのような場合には早急に対処しないと大きな営業損害に繋がりかねないと言えます。