高島屋は7月、カスタマーハラスメント(カスハラ)に対する基本方針をとりまとめて公表した。カスハラを受けたと判断した際は接客を打ち切り、今後の来店を拒否する場合があるとも明記した。大手百貨店が対応を公表するのは珍しい。高い接客力が求められる百貨店の姿勢の表明は、他社の取り組みを後押しする可能性がある。
7月8日付で高島屋グループのホームページに掲載した。客からのクレームや言動のうち「要求を実現するための手段や態様が不適切」で「従業員の就業環境が害されるもの」をカスハラと定義した。
対象となる主な行為として、暴力や不当・過剰な要求、従業員への誹謗(ひぼう)中傷やつきまといのほか、会社や従業員の信用を毀損する内容などのSNS投稿や土下座の要求などを記した。
日経ML 2024年7月22日 2:00 より
大手企業によるカスハラ指針の公表が続いています。今回は百貨店大手の高島屋による指針公表です。
このカスハラ指針は、2022 年 2 月厚生労働省発行の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を踏まえたものとなっています。
そして、カスハラの定義としては
「お客様からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不適切なものであって、当該手段・態様により従業員の就業環境が害されるもの」
としています。これはまさに厚労省の定義規定とまったく同じ定義となっています。
この定義は、クレーム等のうち、その要求内容の妥当性と、その要求を実現するための手段・態様が不適切なものであることを前提としています。
この点、カスハラ行為該当性の判断は、従前から
①要求内容自体が妥当か否か
②要求を実現するための手段・態様が妥当か否か
という2点から判断されるところ、この度の高島屋の基準もこれに沿うものと捉えて良さそうです。
ただ、先日、こちらのブログで紹介したNTTドコモの定義の方がより直接的に、要求内容の妥当性と、手段態様の妥当性を明記しており、その意味ではNTTドコモの定義の方が分かりやすいと感じます。
さて、記事によると、百貨店におけるカスハラ指針の公表は高島屋が初のようです。
他社においても社内での勉強会の開催(大丸松阪屋百貨店)、基本方針とガイドラインの作成(三越伊勢丹ホールディングス)、基準作りを始めた段階(阪急阪神百貨店)という状況のようであり、カスハラ指針の公表には至っていないものの、各社なりの対応を進めているようです。
とはいえ、個人的には、高島屋の今回の公表は、社内外に対するメッセージとして強い意味を持つものであり、とりわけ高島屋の従業員に対しては「安心して働ける職場環境の提供」という意味でとても前向きに受け止められるのではないでしょうか。
とにかくこれからは人手不足が進みますので「人を大切にした経営」という意味でとても重要なことだと思います。
この点、「高島屋グループは、「いつも、人から。」を経営理念とし、「こころに残るおもてなし」「未来を切り拓く新たな生活・文化の創造」「いきいきとした地域社会づくりへの貢献」「地球環境を守るためのたゆまぬ努力」「社会から信頼される行動」を指針に掲げているとのことですので、まさにこの指針に従ったこの度の公表に企業としての姿勢が伝わります。