NTTドコモがカスハラ指針 土下座要求など対象を10分類
NTTドコモは12日、顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に対する基本方針をまとめたと発表した。カスハラに該当する行為を10項目に分類し、悪質と判断した場合は法的措置を含めて対応すると明記した。
日本経済新聞2024.7.12 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1281V0S4A710C2000000/
ここ数年、カスハラに対する対応は日に日に厳しくなってきています。企業だけでなく、地方自治体でも条例の制定(東京都など)が進み、カスハラを許さない風潮がかなり強固な時代となりました。
今回は、業界最大手のNTTドコモでもカスハラに対する基本方針がまとめられました。
そこではカスハラの定義を以下のように整理しています。
お客さまからの言動・要求のうち、当該内容に妥当性を欠くもの、または妥当であっても手段・態様が社会通念上不相当なものであり、従業員(ドコモショップ、コンタクトセンター、ネットワーク品質調査、企業対応など)の就業環境が害されるもの。
NTTドコモ 報道発表資料 「NTTドコモグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」の策定
<2024年7月12日>より報道発表資料 : 「NTTドコモグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」の策定 | お知らせ | NTTドコモ
この定義では、
①言動・要求自体に妥当性を欠くものと、
②(言動・要求自体が妥当であっても)手段・態様が社会通念上不相当なものとを分けています。
そして、これらの結果、③従業員の就業環境が害されるものをもってカスハラと定義しています。
このような定義付け自体はカスハラ該当性の判断に際して従前から用いられている判断枠組みであり、今回の指針ではこのことを明確にしたものといえます。
すなわち、①については、要求事項等自体が不当であれば(たとえば、NTTドコモの提供するサービスとまったく無関係な要求事項をするなど)当然、カスハラとみて構いませんし、②については、一見すると要求事項等自体はNTTドコモのサービスに関係があっても、そのことを要求等するに際して限度を超えた手段による場合(過度に大きな声で要求する、長時間に渡る苦情など)にはやはりカスハラに該当するとみて構いません。
最終的にこの度の指針策定は、①従業員に安心して働ける場を提供するという会社の従業員に対するメッセージ、②顧客に対して、毅然とした態度をとるということのアナウンス、③社会に対してNTTドコモが果たすべき使命を明確にしたものと評価できます。
従前は、顧客の(過度な)要求や要望に我慢することで凌いできましたが、社会構造の変化(少子高齢化による労働力の減少)や価値観の変化(労働者や企業としての立場、権利意識の向上)を踏まえカスハラに対する向き合い方が変化してきたものと言えます。
今後もあらゆる企業でこのような指針策定は続くことと思います。その際に大切なことは、「指針を作成して終わり」にしないことです。この指針は現場で活用されて初めて意味があります。
したがって、指針を策定するに留まらない現場での実際の運用にも期待したいと思います。
【2024年7月30日追記】
上記の報道の後に、NTTドコモだけでなく、ソフトバンクやKDDIのカスハラ指針についても確認ができたので以下、ご紹介します。
まずソフトバンクについてもやはり厚労省のカスハラ指針をベースに以下のようにカスハラの定義をしています。
「お客さまなどからのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、従業員等の就業環境が害されるもの」
また、KDDIについてもやはり厚労省のカスハラ指針を基にした以下の通りの定義がなされています。
従業員などに対するお客さまからのクレーム・言動のうち、「当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、従業員などの就業環境が害されるもの」
このように、携帯大手3社ではいずれも厚労省の指針を元にしたカスハラの定義付けがなされ、かつこれが公表されていることから、後は現場でどの程度これら定義や指針に基づきカスハラ対応がなされるかに注目されます。