カスハラによる労災件数と自殺の労災認定の状況について

2020年に住宅メーカーの男性社員(当時24歳)が自殺したのは、客から著しい迷惑行為を受けた「カスタマーハラスメント(カスハラ)」などで精神疾患を発症したことが原因だとして、柏労働基準監督署(千葉県)が労災認定していたことがわかった。自殺とカスハラの因果関係を認める労災認定が明らかになるのは異例。

読売新聞オンライン2024.7.23 5:01 配信

先日来、カスハラへの対応についての条例制定の動きNTTドコモ高島屋による指針の公表について注目し、ブログにとりあげてきました。

これらの記事では、カスハラの定義のあり方や、企業などカスハラ被害を受ける組織の目線での対応策についての解説をしてきました。

他方でこの度の冒頭の報道では、カスハラによる被害により自殺に至り、これが労災認定されたケースについてのご紹介です。

そして、この報道では、「自殺とカスハラの因果関係を認める労災認定が明らかになるのは異例」とのまとめ方になっているので気になって調べてみました。

その結果、令和5年年に厚生労働省の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において、精神障害の労災認定の基準に関する報告書を取りまとめ、その結果、具体的出来事として「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されることとなっていたことがわかりました。

その上で、令和5年度の過労死等の労災補償状況において、このカスハラの統計情の数字が明らかにされています。

具体的には、この統計資料のp18にて、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」との項目があり、52人が支給決定を受けていることが明らかになっています。またそのうち1名が自殺とされており、この1名は女性とのことです。

したがって、冒頭の報道にある件とは別途、令和5年度の時点でカスハラを理由とした自殺事案、労災認定事案が生じていたものと認められます。

カスハラという問題は古くて新しい問題です。この度の報道や厚労省の統計から分かることは、カスハラ被害の重大さです。自殺に至るほどのカスハラとは具体的にどのようなものだったのか、想像を絶する部分があります。

さて、こうしたカスハラ問題を踏まえ企業としては、企業を守るべく、従業員を守るべく具体的にどのような取り組みをすべきか、NTTドコモや高島屋のような取り組みを参考に早急な対応が求められます。

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