岡山市の地域ケア総合推進センターと公民館においてインターネットでダウンロードしたイラストを無断使用したとしてその使用料を請求されたという問題がありました(2016年12月21日山陽新聞)。
市の担当者が、無料と思って使用したところ(「無料 イラスト」などの検索をしてヒットしたイラストをよく確認せず使用したようです。)、実際には無料ではなかったために後日になって請求がきたということです。
この報道を見て感じたことは2つです。
1つ目は、ネット上に掲載されているあらゆる文章、イラスト、画像、動画は基本的にその著作者の著作権が及ぶことに対する配慮があまりにも低いということです。
すなわちネット上の著作物については、その著作者が権利放棄しない限り、著作権が及びます。したがって、これを無断使用することは基本的に著作権侵害となります(新聞報道や他人の文章を引用元を明らかにして引用する場合や、著作物を個人的に利用する場合は例外です。)。
そのため、本件のように、無断で有料のイラストを利用した際に、著作者の設定する利用料を後日請求されてもやむを得ません。
2つ目には、担当職員が「無料 イラスト」と検索した結果表示されたイラストを利用したため、利用料がかかることへの配慮が行き届かなかったようですが、このことで感じるのは、老若男女問わずネット検索に対して過信し過ぎだということです。
ネット検索においては、検索エンジンに検索キーワードを入力してヒットした内容を各自が閲覧している状況ですが、検索エンジンの検索結果というのはあくまで検索キーワードに基づいて検索エンジンのコンピューターの判断に基づき表示しているに過ぎず、たとえ「無料 イラスト」と検索したとしても、その結果表示されたページがいずれも無料でイラストを提供しているとは限りません。
このことは、たとえばあるサイトに「当サイトのイラストは無料ではありません。」と記載がある場合でも、キーワードとしては「無料 イラスト」という言葉を含んだサイトであるため、「無料 イラスト」と検索した場合にヒットする可能性があることを考えればよくわかります。
したがって、検索結果に対しては常に各自の「人間としての」良識的、常識的な判断が必要となりますが、ここ最近はそのことに思いが及ばず、無批判に検索結果を鵜呑みにする傾向が広まっているように思います。
さて、ネット記事の信頼性の観点でいうと、ここ最近ではDeNAほかのまとめサイトの件があります。この件も、結局はネット上の記事を無断使用したという意味でネット上の著作権侵害が問題となります。
当然、無断使用された原稿を書いた人からは、無断使用した側に損害賠償を請求できるでしょう。
ただ、その場合には、上記のイラスト業者と異なり、そもそも他人に利用されることを念頭に置いて「利用料・使用料」の設定をしていないことが通常であるため、損害の立証が難しいというやっかいな問題があります。
とある個人の記事を無断使用された場合に、著作者に具体的にいくらの損害が生じたかはその著作者に立証責任があります。
しかし、その立証は非常に困難です。
そういう観点から考えると、ネット上に記事を掲載することを常とする場合、管理ページ等に「当サイトの記事を無断使用した場合には、利用料として〇〇円の利用料を請求いたします。」とあちこちで謳っておくことが良いかもしれません(ただし、このような記載をしても当然にその利用料全額をとれるとは限りません。)。
また、DeNAなどの件でも結局は、記事の検索結果を過信する読者の問題もなかったとは言い切れず、今の時代やこれからの時代でのネットと人間の付き合い方を考える時期に来ていると思います。