2016年12月15日にIR推進法(正式名称=特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が成立しました。
同法に対しては、ギャンブル依存の問題が強く指摘されるなどし、多くの反対の声が挙がっています。
ただ、同法の内容自体からいますぐにカジノが解禁となったものではありません。あくまで、同法は「推進法」であり、今後、カジノ誘致を進める自治体や民間企業、そして国の協力のもとに複合観光施設を建設していくこととなります。その複合観光施設(会議場、レクリエーション施設、展示場等)の一部にカジノが含まれることとなるのです。
ところでカジノは賭博なので、刑事罰の対象となります。ただし、刑法35条は「法令・・・による行為は罰しない」とし、今後、カジノの合法性を認める法律を制定することで、刑法上の賭博罪の対象から外すことを政府は予定しているのです。
また、カジノが解禁になるのに先立って、パチコン店での3店方式での換金行為も刑法上の賭博罪に該当しないとの解釈を政府は示しました。
そして、これらカジノやパチンコとは別に、飯塚市の市長らが賭け麻雀にいそしんでいたこと、そのことに対する会見での態度が大きく問題となっています。
会見では、「賭けずに麻雀をする人がどの程度いるのか逆に調べてみて欲しい」と発言するなど、市長らの問題意識の低さに呆れてしまいました。
今回の市長の賭け麻雀が事実であれば、上記の賭博罪に該当しそうです。
ただ、賭博罪は「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」には成立しないとしていますが、どうなのでしょうか。
そもそも賭博が罪として規定されているのは、賭博が国民を怠惰浪費させ、勤労という国民意識を害するからです。
ただし、一時の遊びの中で、ちょっとした「物」(おかしや、食事程度)を賭けるにとどまるのであれば、国民を怠惰浪費させたりしないので刑事罰の対象から外しているのです。
しかし、市長の説明だと「物」でなく「金銭」を賭けていたことが明らかになっており、その額も、おかし代とは言えない額です。そうすると、やはり「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」とはいえず、賭博罪が成立するといえます。
このような認識を持たずに逆切れするような態度に出た市長の資質には大いに問題があると言わざるを得ません。
結局、IR推進法でも、パチンコでも、賭け麻雀でも基本的には刑法上の賭博罪と密接に関連していることは明らかであり、たとえば今後カジノ施設を運営する企業にしても、パチンコ店にしても、それから麻雀店にしても、刑法の規定を念頭に置きつつ、どこまでの行為が許されるのかを適切に判断する必要があるといえます。