今日の日経新聞に「謝罪の経済学」というタイトルの論考が掲載されていました。
要点は以下のとおりです。
(1)相手に本気度を示すにはコストを伴う必要がある
(2)丁寧に謝れば金銭を支払うより高い効果が得られることもある
(3)アメリカでは謝罪の持つ有効性を踏まえた法律が広がっている
(日本経済新聞2017年8月10日朝刊より)
(1)の「コスト」ということの意味は、何かの失態、失敗に対して、単に謝罪をするだけでなく、その失態や失敗に対し金銭的もしくは非金銭的なコストを負担した方が、謝罪を受けた側は納得し易いし、信頼の回復につながるという趣旨です。
芸能人がスキャンダルを起こした場合に、番組を降板するのも「非金銭的コスト」となります。企業が商品の不具合を出した場合に、消費者に商品券を送るのは「金銭的コスト」です。
たしかに、謝罪+コストの方が、単なる謝罪のみよりは理解が得られそうですし、感情的にも納得し易い効果がありそうです。
他方で、(2)については、(1)の内容と相反するようでもありますが、
丁寧な謝罪>謝罪+金銭>金銭
という意味であり、丁寧な謝罪が何よりも価値があるということです。企業としては、不祥事に対して安易に「金券でも配れば消費者は黙るだろう」などと考えるのではなく、まずは誠実な謝罪を考えるべきです。その上で、賠償すべき損害があればコストをかけて対応するべきなのです。
(3)については、よく世間で「交通事故を起こした時に相手に謝ると、非を認めたことになるから絶対に謝ってはいけない」と言われる風潮に対するものです。
アメリカでは、加害者からの謝罪がない→感情的に納得ができない→訴訟に移行するという傾向が強いと言われています。
そして、その訴訟コストがある種の社会問題となっています。
そこで、謝罪=非を認めたことにはならない、という法律を作ることでこの訴訟コストを低減することに成功しているとのことです。
いずれの論考も非常に示唆に富み、また客観的な調査に基づくもので興味深いですね。
個人でも、企業でも、どんな人でも失敗はあり得るものです。その時に、どう対応するかにより、その人や企業の価値や真価が問われると思います。