ダウンジャケットのフードに付いているゴム紐がひっかかり、跳ね返って目に当たったために外傷性白内障になったとして製造元を被告とした裁判で、東京地裁が約4000万円の請求認容判決を言い渡したとのことです(2016年12月6日朝日新聞)。
争点として考えられるのは、
(1)製造元の注意義務違反の有無
(2)損害額
です。
(1)について判決では、ゴム紐が長く、着用者が意図せず顔や目を負傷するおそれがあったとし、かつ、原告が製品を購入する2年前にゴム紐がの留め具が目を直撃する危険性を警告する論文が出ていたことなどを根拠として肯定しているようです。
製造元としては、ちょっとした衣類であっても相応の注意を図る必要があるといえます。
(2)についてどうして4000万円になったのか、新聞報道からは分かりませんが私なりに推測すると以下のとおりです。
・治療費→数十万円から数百万円(予想としては100万円から300万円程度か)
・入通院慰謝料→数百万円(予想としては200万円程度か)
・後遺障害慰謝料→数百万円(仮に後遺障害9級相当であれば約700万円か)
・逸失利益→1000万円~(仮に年収500万円で事故時40歳であれば2500万円程度か)
・弁護士費用→300万円~500万円程度か
これらをざっくり合計すると4000万円前後になりそうです。もちろんあくまで本件のような事故の場合の損害額において算定される項目を仮定的に積み上げているだけですが、参考にはなると思います。
ちなみに、製造元としては原告側の過失相殺を主張するものと思われ、その場合には裁判所の方で原告の過失の有無、程度を考慮し、場合によっては全損害の1割~3割程度を相殺しているのではないでしょうか。
また、後遺障害は上記外傷になったことに伴う視力低下を取り上げていますが、視力低下の程度によって等級が異なってきます。その等級内容によって後遺症害慰謝料額や逸失利益が異なってきます(仮に失明に至っていれば賠償額も当然上がる)。
そして、逸失利益とは、当該後遺障害がなければ得られたであろう将来の労働の対価を加害者に支払わせるものです。視力の低下によって仕事に支障が生じ、収入が低下することの損害を補てんするものです。
以上、ちょっとした構造上の欠陥が、多大な賠償責任に至ってしまうことを理解して頂けたらと思います。