母体保護法に基づく指定医としての指定を受けていない医師が人工妊娠中絶を行ったところ、数日後にその女性が急性うっ血性心不全により死亡したとの報道がありました。
母体保護法は、人工妊娠中絶を各医師会の指定した医師に限定しています。仮に指定がないまま人工妊娠中絶を行えば業務上堕胎罪(刑法214条)により罰せられます(懲役3月以上5年以下・死傷した場合には6月以上7年以下)。
ただし、本件では、中絶処置と女性の死亡との因果関係がまだ明らかでないため、死亡についての法的責任が問えるかは不明です。
そして、病院側は、資格のない医師による人工妊娠中絶を認めているものの、死亡との因果関係は否定しています。
そうすると、病院側の責任を追及するためには司法の判断が必要となるでしょう。
被害者女性の夫はすでに業務上堕胎罪により刑事告発をしているとのことですし、今後は民事責任を追及する訴訟に移行することも十分に考えられます。
非常に不幸な事件が起きてしまいました。現在の日本の法律の下では、単に「医師」としての資格を有するのみではなく、業務遂行上、各種の「指定」が必要となることが多々あります。
病院の経営者としては各法律の規制や厚労省の通達などに十分精通しておくことが求められます。