少し前ですが、2016年4月に、「フランク三浦」なる商標名にて、フランクミュラーの時計を模した腕時計を販売していた業者に関し、知財高裁が「フランク三浦」という商標は「フランクミュラー」という商標を侵害していない(有効である)という判決を出したというニュースがありました(ただし、フランクミュラー側が上告しており、現在最高裁の判断待ちです。)。
これとは別に、2016年10月には「ajidesu」と書かれた有名メーカーのデザインをまねしたTシャツ等を大量に販売していた業者が商標法違反で逮捕されたという事案がニュースになりました。
いずれのニュースについてもネットで検索すると画像を含めてたくさん表示されるのでまずはそちらを見て頂くと何が問題かよくわかると思います。
その上で、「どうして『フランク三浦』はOKだけど、『ajidesu』はNGなのか?」を考えていきたいと思います。
そもそも商標法は、1条に以下のとおりその意義を定めています。
「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」
なので、登録商標を侵害する場合には、その登録商標を守り、業務上の信用を維持するなどのための措置をとることが可能です。
問題は、「フランク三浦」という商標が「フランクミュラー」という商標を侵害しているか、「ajidesu」という表記が「adidas」という商標を侵害しているかという判断の問題となります。
そして、上記知財高裁では侵害を否定したため(現時点では)フランク三浦という商標を用いて時計を販売することもOKという状況です。他方で、「ajidesu」については、知財高裁という民事での争いではなく、警察による逮捕という刑事手続きが先行していることから、最終的には刑事裁判の中で「ajidesu」という表記が「adidas」という商標を侵害しているかが判断されることとなります。
どうして上記二者の扱いが異なるのか、一般的には理解に苦しむと思いますが、少なくとも「フランク三浦」の場合には、言葉に出した時の語感が「フランクミュラー」という語感に近いとは言いうるものの、あくまで文字にして表記した場合には、「三浦」という漢字が明確に「ミュラー」というカタカナと異なっており、全体としてはまったく異なる商標だ、と評価されているといえます。
「ajidesu」の場合には、文字がすべてアルファベットから構成されており、語感上も、表記上もいずれも「adidas」という商標を侵害していると判断されたのではないでしょうか。
このように、パロディによる商標や商品は、商標権侵害の判断が非常に微妙であり、違反をめぐって裁判になることも多く、時には刑事事件に発展することすらあるので、商品製作上、細心の注意が求められるといえます。