「昨年ノーベル文学賞を受賞した米歌手ボブ・ディランさんの歌の一節を、京都大の山極寿一総長が取りあげた4月の入学式の式辞について、日本音楽著作権協会(JASRAC)がウェブ上に掲載した分の使用料を京大に請求していることが18日、関係者への取材で分かった。ディランさんの楽曲を管理するJASRACは「個別の事案のコメントは差し控える」、京大広報課は請求された事実を認め「根拠の詳細を知らされていないため、特に対応していない」としている。」
(京都新聞 2017年05月19日 05時00分 )
最近何かと多く取り上げているジャスラックからの請求事案です。
今回は、京都大学の入学式式辞を大学HPに掲載した際に、式辞で引用されたボブディランの歌詞が著作権料の対象となるかが問題となっています。
著作権法上は、著作物について「引用」による利用が認められていて、「引用」となれば著作権侵害やその利用料の支払いは問題となりません。
そして、著作物が自由に使える場合の説明は、文化庁によると以下のとおり説明となっています。
「 著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条~第47条の8)。
これは,著作物等を利用するときは,いかなる場合であっても,著作物等を利用しようとするたびごとに,著作権者等の許諾を受け,必要であれば使用料を支払わなければならないとすると,文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ,かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねないためです。
しかし,著作権者等の利益を不当に害さないように,また,著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう,その条件は厳密に定められています。」
(文化庁HP)
ある程度の範囲で「引用」を含めた自由な理由を認めることが社会全体の文化の発展に寄与するという趣旨ですね。
そう考えると、今回の式辞は、全体として引用の部分を式辞そのものと明確に区分しており、引用も全体の一部にとどまっているので、著作権法上の「引用」の要件を満たすと思います。
どうしてこのようなケースまでジャスラックが動きだしているのか、先日から考えてみるに要するにジャスラックとしての著作権料収入を確保したいという思惑ないし今後の著作権料収入低下の不安があるようです。
それにしても音楽教室、動画投稿、大学の式辞など本当にここ最近のジャスラックの動きは目が離せません。
*ちなみにこの記事自体も、京都新聞や、文化庁のHPといった他人の著作物を「引用」して作成されています。