ネット上の掲示板に妻の容姿を誹謗中傷する書き込みをされたとして、横浜DeNAベイスターズの井納翔一選手が、書き込んだユーザーを訴えたと週刊誌が報じています。
(ライブドアニュース http://news.livedoor.com/article/detail/14221131/)
私は、当該週刊誌をまだ確認していませんが、今朝のTV報道では、どうやら、ネットの掲示板において、井納選手やその奥さんに関し、「ブス」とか「妻がブスだからキャバクラ行くわな」という趣旨の投稿があったようです。
このような昨今のネットでの名誉棄損の問題については、一般の方にもかかわりがありますし、企業なども無視できない問題です。以下、関連する論点を説明します。
(1)まず、匿名掲示板なので個人の特定ができないと誤解している方が多いです。
しかし、掲示板に対するIPアドレスの開示請求をし、その後、書き込みをした人が利用したパソコンや携帯のインターネットプロバイダーに対して当該IPアドレスの保有者情報の開示を求めることで、個人の特定は法的に可能です。
いくら表現の自由といっても、他人の名誉等を侵害する表現が許されることはなく、それゆえこれらの開示請求が成り立つのです。
(2)次に、今回の表現内容がどのような権利侵害になるかという点です。
「ブス」との書き込みは、井納選手の妻の名誉ないし名誉感情を害するとされると思います。名誉とは、人の社会的評価をいい、名誉棄損とはこの社会的評価を低下させることです。また、名誉感情とは、自分自身の持っている意識や価値をいいます。名誉感情侵害はこれを侵害することをいいます。
このように名誉棄損か、名誉感情侵害かは、その人の社会的価値の棄損か主観的意識の侵害かが異なります。
本件での「ブス」との書き込みは、どちらかというと名誉感情侵害となりそうです。
他方で、「だからキャバクラいくんだ」という趣旨の書き込みは、妻がブスだからキャバクラ通いしているかのごとく印象を第三者に与えるものとして、名誉棄損になりそうです。
(3)最後に、名誉感情侵害もしくは名誉棄損が成立したとして、どの程度の慰謝料が認容されるかです。
この点は裁判官にもよりけりではありますが、報道にあるように200万円の認容となることはなさそうです。有名野球選手とその妻ということであっても、数十万円が関の山かと予想します(ここはあくまで個人的感覚ですが)。
いずれにしても、ネットの流通により、不注意な言動が公にされることが増え、また証拠として形に残りやすい世の中になっています。「匿名だからばれないだろう」とか「他の人も書き込んでいるし」という言い訳は通じません。
当事務所でも、ネットの書き込みによる個人の特定や名誉棄損損害賠償請求の事案が増えています。書き込みの被害にあった個人、法人の方からいつでもご相談をお受けいたします。