インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)が、同社の通販サイトに出品する事業者に値引き販売した額の一部を補填させていた疑いがあるとして、公正取引委員会は15日、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)容疑で同社を立ち入り検査した。
(日経新聞 2018年3月16日)
つい先日、3月1日の「ニュースと法律」でも上記と同様の報道を取り上げました。
その際には、アマゾンジャパンによる「協力金」の要請は独禁法には抵触しないとの趣旨で解説しました。そのためこの時の「協力金」問題については公取も取り上げていないようです。
それに対してこの度の報道でも、先日と同様「協力金」が問題となっているのに、独禁法違反が指摘され、公取の立ち入り検査が実施されているので、結局これら「協力金」は何が異なるのか、疑問に思う方も多いと思います。
この点、先日取り上げた「協力金」問題は、アマゾンジャパンが、配送費の増大に伴う費用負担を各取引先に一律に求め、かつ負担しないことに対する取引停止などはないとのことで、いわゆる独禁法に定める「優越的地位の乱用」にはあたりませんでした。
他方で今回は、アマゾンジャパンが、在庫消化のために値引き販売したその値引き分の負担を、仕入先に求め、応じないと取引停止を示唆したこともあるようだとのことです。これは、要するに自社の強い立場を背景に、取引先に不当な要求を飲ませるものであり「優越的地位の乱用」に当たり得るのです。
すなわち、前者と後者では同じ「協力金」名目でも、これをアマゾンジャパンが求めることの背景に「優越的地位の乱用」があるか否かが異なるのです。
取引先としては、アマゾンジャパンの圧倒的なプラットフォーマーとしての地位に頼るほかなく、後者のような「協力金」についても飲むほかないのが実情です(前者のような「協力金」は、ある意味で、人手不足などから配送費が増大している以上は、これをアマゾンジャパンが取引先に負担を求めることには正当な理由があります。)。
しかし、公正な取引のため、エンドユーザーのため、独禁法はこの度のアマゾンジャパンの対応に対して立ち入り検査に踏み込んだものです。