試用期間中の解雇は合法か? ~解雇理由や手続き、注意点を弁護士が詳しく解説~

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このコラムについて

企業が新たに従業員を雇用する際、しばしば「試用期間」が設けられます。この「試用期間」は、建前上は企業と従業員の双方にとって、お互いの相性や適正を見極めるための期間とされます。

とはいえ、一般的には試用期間は、企業が採用した従業員の能力や適正を図る意図ないし目的で設定され、そのように活用されているのが実態です。

より具体的には、試用期間中の働きぶりを見て本採用を拒否したり、場合によっては解雇をしたりすることを想定して設けられているのです。

そこで、このコラムでは、企業の立場から試用期間の意味や一般的な日数、企業が試用期間をどのように活用すべきか、試用期間中の解雇や本採用拒否を巡り法的問題が生じた際の解決方法などについて紹介し、企業側弁護士の視点から詳しく解説します。

試用期間は、企業と従業員双方にとって重要なステップであり、適切に運用することで、より良い雇用関係を築くことができます。本コラムを通じて、試用期間の意義や運用のポイントを理解し、より円滑な職場環境を目指す一助となれば幸いです。

1 試用期間について

(1)試用期間とは何か?

「試用期間」とは、企業が新たに採用した従業員が、業務に適応できるかどうかを見極めるために設けられる一定の期間です。

この期間中に、企業は従業員の能力や勤務態度、職場への適応力ないし適格性などを検討し、正式な採用に値するかを判断します。

正式な採用に値しないと判断した際には本採用を拒否したり、場合によっては解雇をしたりすることがあります。

とはいえ、試用期間であっても雇用契約自体は完全に有効に成立していることには何ら変わりはありません。試用期間中でも労働者は、労働契約法や労働基準法の適用を受けます。

そのため、雇用契約に基づき、企業としては賃金支払い義務がありますし、労働者は労務提供の義務があります。雇用主は自由に解雇できるわけではなく、合理的な理由がない解雇は無効となる可能性が高いのです。

他方で、試用期間を設けることは、従業員側にとっても、職場環境や業務内容が自身に適しているかを判断するための大切な期間です。

とはいえ、元々、労働者からの退職は2週間前の告知で足りるので(民法627条)、試用期間を設ける意味はもっぱら企業側にあると言っても過言ではありません。

すなわち、企業としては、試用期間を設けることで、その期間中の解雇を容易にし、また試用期間経過後の本採用拒否を容易にする効果があるのです。

これは試用期間を設けず、最初から従業員を本採用した場合と比べ大きく異なる点です。

その意味で、試用期間は主に使用者である企業にとって有利な側面があるのです。

(2)試用期間の長さや期間中の教育について

試用期間は、一般的には14日間から3か月程度で就業規則に設定されることが多いです。

企業としては、この程度の期間があれば当該従業員の適正を十分に図ることが可能と言えます。

そして、特に最初の14日間は法律上も解雇のハードルないし要件が比較的低くなる期間として認識されています。

それは、雇用契約成立から間もない期間であり、労働者としても比較的容易に他社への転職が可能と言えるからです。言い換えると、採用から長く経ってからの解雇は、雇用継続に対する期待が強まっているため解雇は厳しく判断されがちとなるのです。

いずれにしてもこの試用期間中に企業は、従業員に適切な業務経験を与え、従業員が持つスキルや態度を正しく評価するための日数を確保することが重要です。

言い換えると、試用期間は、単に入社したばかりの従業員の能力や適正を「試す」ための時間ではなく、必要な研修やサポートを提供する期間という意味もあるのです。

そのため、これらを尽くさずに試用期間の経過と共に本採用を拒否したり、解雇をしたりすれば企業には不利な結論に至りかねません。

なお、試用期間は就業規則に規定していることが通常ですが、この就業規則についての詳しい解説は本サイトの以下のページからご参照ください。

(3)試用期間中の解雇と本採用拒否の違い

ところで、これまで説明してきた「試用期間中の解雇」「本採用拒否」は混同されがちですが、法的には異なる概念です。

まず、解雇とは、締結された雇用契約を企業側が一方的に終了させることを指します。

一方、本採用拒否は、試用期間を経て正社員としての採用を見送るという判断です。これは試用期間の経過を持って雇用契約を継続しないという企業からの意思表示です。

ただし、本採用拒否であっても、一定の場合には違法な採用拒否としてその効力を争われることがあるので注意が必要です。

その意味では本採用拒否であっても無条件に許される訳では無いことに注意が必要です。

2 試用期間中の解雇が認められるのはどういう場合か?

(1)試用期間中の解雇について

試用期間中であっても雇用契約は有効に成立しているため、その間に解雇事由が生じれば当然、解雇が可能です。

しかし試用期間中であっても、解雇が無条件に許されるわけではありません。

たしかに試用期間であるがゆえ、試用期間経過後のケースに比較すると、緩やかに解雇が認められ易いといえます。

とはいえ、解雇の要件として社会通念上客観的に合理的な理由が必要とされること自体は変わりません。
 

なお、解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「その他の解雇」がありますがこれらの違いや要件、判断基準等については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。
試用期間においても妥当する内容ですので十分にご確認ください。

(2)試用期間中の解雇のよくある例は?

この試用期間中の解雇として一般的に認められている範囲ものとしては、以下の通りです。
 

① 能力不足

② 病気やケガ

③ 勤務態度の不良

④ 経歴詐称

これらの典型的な事例の場合には試用期間中の解雇が認められやすいと言えます。

他にも、上記のような普通解雇とは別に、試用期間中に懲戒解雇に相当する事由が生じた際には、懲戒解雇の手続による解雇が可能であることは当然です。
  

そして、以下では上記の4つのケースについて順番に詳しく解説をしていきたいと思います。

なお、問題社員に対する解雇については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

(3)①能力不足による解雇について

能力不足は試用期間中の解雇理由として最も多いケースの一つです。

企業は一定の能力を有することを前提に従業員を採用しているので、その能力に満たない従業員に対しては労務提供能力が欠けるとして解雇の余地が生じるのです。

ただし、企業が単に「能力がない」と考えただけで常に解雇が認められる訳ではありません。

すなわち、企業としては、そもそも募集の際に具体的にどのような業務内容であるかを明示し、どのような能力を求めるのかを明示しておくべきですし、採用の際にはこれらの点を十分に考慮、検討の上で選考を行うべきです。

とりわけ中途採用の場合や、職種限定の場合には即戦力としての活躍が強く期待されるので、上記の点について十分な検討が重要です。

いずれにしても、企業としては従業員の採用を決めた時点で、当該従業員には企業が求める一定の能力があるとの推定が働きます。

そして、採用後は試用期間中に、従業員に担当させる個別の業務内容に対して具体的にどのような能力が求められるかをしっかりと明示し、それに対してどのような支障や不足が生じているのかを具体的に説明する必要があります。

その上で、従業員に不足している能力等について、研修や教育の機会を与えることも必要です。

とりわけ、新卒採用の従業員の場合にはそもそも社会人としての経験や能力自体が乏しいことから、これらの機会を十分に与えたかどうかが解雇の正当性判断の際に問われることとなります。

以上を前提に、たとえば、営業職であれば「基本的なコミュニケーション能力に欠ける」「目標達成への意欲が見られない」といった業務上の支障が能力不足の典型例と考えられます。

また、事務職であれば、「入力作業に時間がかかりすぎて、納期に影響を及ぼしている」などが典型例です。

そして、これらの具体的な能力不足の事情について、改善のための教育の機会等をしっかりと与えたかどうかが重要なポイントとなります。
さらに、能力不足の評価は企業側の主観的な判断に偏らないよう、評価基準を統一しておくことが重要です。
加えて、解雇という判断に至る前に、顧問弁護士に相談をし、助言を求めておくべきです。

すなわち、解雇には費用負担や法的リスクも伴います。対応を誤ると後々の法的悩みや紛争に発展することもあるため、必ず専門家の助言を仰ぐようにしてください。

そうしないと、従業員から不当な解雇であるとして後に法的紛争に陥りかねません。不当解雇と認定された場合には、多額の損害賠償額を負担する可能性もあります。

なお、以上の「能力不足」による解雇については、ローパフォーマーに対する対応について詳しく解説した以下のページもぜひご参照ください。

(4)②病気やけがによる解雇について

試用期間中であっても、従業員が病気やケガにより職務遂行が困難となった場合、就業規則に定められた条件に基づき、解雇が認められることがあります。

特に、病気やケガが長期に及び復職の見込みが立たない場合、企業にとって業務上の支障が大きくなるため、やむを得ない対応とされることもあります。

ただし、このような解雇には慎重な判断が必要です。

労働基準法第19条では、「業務上の傷病による休業期間およびその後30日間」は、原則として被保険者の解雇を禁止しているからです(昭和48年通達)。

そのため、病気の発生原因が業務にあるかどうかは非常に重要な判断材料となります。

他方で、病気やケガの内容が業務外であり、復職が難しいと客観的に判断される場合には、解雇が正当化される可能性があります。

そもそも雇用契約は、労働者が使用者に対して労務を提供することを内容とする契約です。

そのため、病気やケガのため労務が提供できないとなれば、債務の本旨を尽くせない以上は雇用契約の一方的終了方法としての解雇が正当化されるのです。

なお、最近ではうつ病を理由とした休職が増えていますが、このうつ病を理由とした解雇の可否については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

(5)③勤務態度の不良を理由とした解雇について

試用期間中において、勤務態度の不良は解雇理由としてしばしば検討されます。
 

すなわち、企業からすると、採用後の従業員の勤務態度を図るためにこの試用期間を用いることが多々あるのです。

従業員の勤務態度は、社内の人間関係や雰囲気にも大きく作用しますし、顧客や取引先との関係上も重要な意味を持ちます。

そのため、従業員の勤務態度の不良は企業活動上、非常に重要な意味を持つため解雇理由として上がりやすいのです。

とはいえ、勤務態度の良し悪しは非常に評価しづらく、客観化しにくいという問題があります。

また、勤務態度は能力不足と異なり、場合によっては改善がし易い問題ともいえます。

そのため、勤務態度の不良が気になったとしてもいきなり解雇に踏み切るのではなく、勤務状況をきちんと観察・記録し、適切な対応を段階的に行うことが重要です。
  

たとえば、「頻繁に遅刻する」「無断欠勤をある」「指示に従わない」「職場のルールを守らない」といった仕事に支障をきたす内容が確認された場合、まずは記録を残し、注意や指導を行い、改善の機会を設けるべきです。

その後も改善が見られない場合に限り、解雇を検討するのが望ましい対応です。

解雇時の注意点

最終的に解雇を行う際には、その理由を文書化し、トラブル回避のための証拠を残しておくことが重要です。

可能であれば、担当者が面談の記録を作成し、本人に内容を共有した上で署名をもらうなどの工夫も有効です。

(6)④経歴詐称を理由とした解雇について

経歴詐称は、試用期間中の解雇理由として正当性が高いケースの典型例といえます。

仮に履歴書や面接時の発言において、学歴・職歴・保有資格、懲戒処分歴などを故意に偽った場合、それが判明した時点で雇用契約の信頼関係が破綻していると判断されるからです。

たとえば、履歴書等に「大学卒業」と申告していたにもかかわらず実際には中退であった、他社での実績を過大に申告していた、あるいは資格の存在自体が虚偽だったという事例があります。

これらの虚偽が業務の遂行能力に高い影響を与えると判断されれば、解雇が認められる可能性は十分にあります。

他方で、些細な経歴詐称や、業務内容に影響の生じない経歴の詐称であれば解雇が認められないことも多々あります。

すなわち、大学卒業と書いていても、当該企業ではそもそも大卒か否かを特にこだわっていないとか、業務上、大卒か否かはまったく影響がないなどの場合です。

また、特定の資格を持っていることを偽っていたとしても、当該企業や担当する業務上、その資格を用いることがまったくない場合も同様です。

そのため、経歴詐称を理由とした解雇を検討する際には、経歴詐称が業務にどの程度影響するか否かをしっかりと見極めることが大切です。

その検討の結果、経歴詐称を根拠とした解雇は難しいとなった場合には、他に業務上の不誠実な行動がないかを調査し、そのような事実があればそれを理由とした解雇を検討するのが良いと思います。

得てして、③と④のように、遅刻や欠勤が多く、改善指導にも応じない、重要な業務において重大な違反行為を行った、経歴詐称が判明した、といった例は、労働契約法第16条に基づく合理的な理由として認められやすくなっています。

3.試用期間中の解雇手続きの流れについて

試用期間中の解雇は、法律的に認められているとはいえ、労働者側から「不当解雇」だと請求されるケースが少なくありません。労働契約法や労働基準法などの規定に違反していると判断されれば、解雇は無効となり、企業側が損害賠償責任を負うリスクもあります。

また、SNSやメディアで取り上げられ、企業イメージが損なわれる恐れもあるため、慎重な対応が求められます。

まず、解雇トラブルを防ぐには、採用前の段階で明確な基準を設けることが不可欠です。基礎的な業務スキルや協調性、労働時間への対応力を重視したチェックリストを作成し、採用の段階でしっかりと確認しましょう。

また、面接時に「試用期間満了時に本採用されない可能性があること」や「試用期間中でも解雇される可能性があること」を案内し、納得を得ることが重要です。

上記段階を踏まえたうえで、試用期間中に解雇する場合の流れをご説明します。

(1)試用期間中の解雇手続きの流れは?

試用期間中の解雇であっても、通常の解雇とその手続きの流れは異なりません。

そのため、

① 解雇理由を明確化

② 解雇予告の上で

③ 解雇通知書を交付する

といった流れを遵守するようにしてください。

なお、解雇の手順と注意点については別のページにも詳細を説明していますのでそちらも併せてご参照ください。

(2)①解雇理由の必要性

試用期間中であっても、解雇を行う際には理由を明確にすることが重要です。

解雇を行う企業側には、「合理性」と「社会的相当性」が求められます。単なる能力不足や評価の低さだけで解雇する場合でも、証明できる客観的なデータや面談記録を用意する必要があります。

例えば、「業務遂行能力が著しく不足している」「指導を受けても勤務態度が改善されない」など、定められた就業規則に沿った正確な判断が求められます。

さらに、解雇を伝える際には、本人に対して誠実な説明責任を果たすことが大切です。正しい情報を文書で提出し、相手が納得できるよう丁寧に対応することで、不必要な紛争を防ぐことができます。

(3)②解雇予告の実施

試用期間中であっても、解雇予告の実施は法律で原則として義務付けられています。

労働基準法では、14日を超えて雇用した労働者を解雇する際には、少なくとも30日前に予告を行うか、30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。

解雇予告を行う際には、必ず就業規則や労働契約書の内容を確認し、手続を実務的にしっかりと行うことが求められます。

(4)③解雇通知書の交付

また、解雇の通知方法としては、書面による通知が推奨されます。

そうすることで、会社からは解雇の意思表示をしたこと、その理由として何を挙げたかを明確化し、後の紛争予防に繋がります。

電話やメールのみの連絡はトラブルを招きやすいため、正式な文書で交付しましょう。

特に、懲戒事由がある場合や、度重なる早退、勤務態度不良などの事件が発覚したケースでは、予告なしで即時解雇を行うことも認められていますが、その際は労働基準監督署長の認定が必要となるため、慎重な判断と管理が求められます。

4 解雇後の対応と手続き

(1)離職票の発行

試用期間中に従業員を解雇した場合でも、「離職票」の発行は必要です。

離職票は、労働者が失業保険の申請を行う際に必要となる書類であり、速やかに発行依頼に対応することが企業側に求められます。

特に、離職後のトラブル防止の観点からも、早期の対応が望ましいといえます。

また、退職時には、未払いの賃金や給与の支払についても必ず確認しましょう。

仮に支払いが留保されるような状況があれば、法的な問題につながる可能性があるため、正確な手続きを行ったうえで、必要な金額を支払うことが基本です。

(2)失業保険の受給手続き

試用期間中の解雇であっても、雇用保険に加入していた場合は、原則として失業保険を受給することが可能です。

失業保険は退職後の生活を支える上で非常に重要な制度であり、手続きは早めに行うことが推奨されます。申請が遅れると、給付開始までに時間がかかる恐れがあるため注意が必要です。

失業保険の受給にあたっては、離職票や雇用保険被保険者証などの必要書類を事前にそろえておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。

書類の不備や不足があると、受付で再提出を求められることがあるため、準備は念入りに行いましょう。

企業としても、退職者が申請しやすいように情報提供やサポートを行う姿勢が望まれます。解雇後も適切な対応を行うことで、トラブルの未然防止につながります。

5 解雇に関するよくある質問

(1)試用期間の延長は可能か?

試用期間の延長は可能かどうか、企業経営者の方からよくご相談をいただきます。

結論から申し上げると、就業規則や労働契約書に明記されている内容に従って延長は可能です。

ただし、延長には一定の合理的理由が必要であり、社員に対してもその理由を明確に説明する必要があります。

なぜなら、試用期間中は本採用後よりも解雇が容易とされていることから従業員にとっては身分関係が不安定になるという不利益があるからです。

従業員からすれば少しでも早く試用期間を終え、本採用に移行したいため、試用期間の延長には容易に賛同し難いといえます。

そのため例えば、14日間の試用期間で業務の適性を十分に評価できなかった場合など、業務の理解度や態度の確認が継続して必要であると判断される場面に限り、試用期間の延長が可能と考えるべきです。

その場合には、社内の規定や過去の事例をもとに、延長の可否を検討することが重要です。

また、試用期間を繰り返し延長することは労働契約上のトラブルにつながる恐れがあるため、延長期間は明確に定めておくことが求められます。

一般的には14日や1ヶ月など、短期間で明確な期間設定がされることが望ましいでしょう。

さらに、延長の決定にあたっては、本人の納得を得るための丁寧な説明も不可欠です。

万が一の紛争リスクを防ぐためにも、書面による通知や就業規則への記載がなされているかを事前に確認しておくと安心です。

今後の雇用継続にも影響を与える試用期間の取り扱いは、慎重かつ明確な対応が重要です。

ご不安がある場合は、弁護士への無料相談もおすすめします。

(2)解雇予告が不要な状況とは?

原則として、労働者を解雇する場合は30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。

しかし、一定の条件を満たせば解雇予告が不要となる状況も存在します。

これは労働基準法第21条に定められており、企業経営者にとっては非常に重要な知識です。

まず、解雇から14日以内の試用期間中であれば、解雇予告なしでの解雇が法律上認められています。
ただし、正当な理由が必要であり、遅刻・無断欠勤の繰り返しなど、業務に著しい支障を与える行動が該当します。

また、労働者が刑事事件を起こした場合、非常に重大な背信行為や横領など罰則に該当するケースにも、解雇予告なしでの対応が可能です。

なお、解雇予告が不要かどうかの判断を誤ると、後に法的トラブルに発展するおそれがあります。

交付すべき書面や解雇理由の説明責任も忘れてはならないポイントです。

不安な場合は、顧問弁護士の法的アドバイスを受けることを強くおすすめします。

(3)不当解雇の訴えがあった場合の対処法は?

試用期間中の解雇であっても、不当解雇の訴え(労働審判や訴訟など)が発生する可能性は十分にあります。

これらの問題に対して、企業は慎重かつ的確な対応が求められます。

最初に行うべきは、訴えの内容を正確に把握することです。そして、解雇の理由や手続きに法律違反や相当性を欠く点がなかったかを確認します。

次に、社内での独断的な対応は避け、企業法務の専門家や顧問弁護士に速やかに相談してください。

できれば労働審判や訴訟に発展する前に、事実関係の整理や対応方針を検討することで、不要なトラブルを回避できます。

仮に労働審判や訴訟に発展した場合でも、会社側が適切な措置や判断を行っていたことを示す証拠や記録の保全が重要です。

試用期間中の従業員に対しては、以下のようなポイントを客観的に評価し、記録しておくことが重要です。

① 遅刻・欠勤の回数

② 業務遂行能力(適用力や専門スキル)

③ 職場での態度(協調性や積極性)

④ 指導への反応と改善度

このような証明資料は、万が一解雇後に労働者側から訴えがあった場合にも、企業側の立場を守るために極めて有効です。

また、勤務態度の記録や指導内容の記録の他に、解雇通知の内容などが訴訟対策として有効です。

また、社員とのコミュニケーション不足が誤解を生むケースも多いため、普段から透明性ある社内運用を意識することが予防策になります。
  

いずれにしても不当解雇の訴えに対しては「応じるべきか否か」だけでなく、「企業としての信用やリスクをどう守るか」という観点でも対応を考えるべきです。

企業の立場を守るためにも、適切な法的対処を行うことが大切です。

なお、労働審判の手続などは別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

(4)解雇によらない解決方法はないか?

試用期間中の解雇に限らず、普通解雇にしろ、懲戒解雇にしろ、解雇は後に法的紛争に至る可能性の高い手続きです。

そのため、解雇を避けて退職勧奨の方法により問題を解決する方法があります。

この方法は試用期間中の従業員にも当てはまるため、試用期間中の解雇を検討した際には併せて検討してもらうと良いかと思います。

その他にも、配置転換の方法により解雇をせずに問題解決を図るケースもあるので併せてご検討頂くことをお勧めします。

この点、退職勧奨については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

(5)採用段階からの注意点は?

採用時に求める基礎能力や協調性について明確な基準を設け、面接や試験で丁寧にチェックすることが重要です。

未経験者を採用する場合でも、期待水準を明確にし、それに満たない場合の対応を社内で決めておきましょう。

また、人事や法人として、解雇リスクを減らすために次のことを行うべきです。

① 試用期間中の労働条件の書き方に注意し、契約書に明記する。

② 解雇理由の設定は客観的な基準に基づいたものにする。

③ 定期的なフィードバックを通じて改善の機会を提供する。

なお、労働問題に強い弁護士や社会保険労務士法人と契約し、必要なときに相談できる体制を整えるとよいでしょう。

外部の力を利用することで、トラブルのリスクを大幅に減らすことができます。

6 試用期間中の解雇に関し、法律相談を行うメリット

試用期間中の解雇を進める際、法律相談を行うことは非常に重要です。

専門家のアドバイスを受けることで、解雇に関するリスクを低減し、法的トラブルを未然に防ぐことができます。

法律問題に対する理解を深めることで、適切な対応が可能となり、企業の立場を守ることができます。

その際、社会保険労務士や弁護士に相談することのメリットは大きいです。専門的な知識を持つ社労士や弁護士の助言を得ることで、試用期間中の解雇に関する法的な手続きを円滑に進めることができます。

特に、労働審判や訴訟に発展してしまった場合や、その可能性が高い場合、従業員の対応が強硬な場合や労働組合を通じた要求がある場合などにおいては、もはや社会保険労務士による対応は難しく、すみやかに労働問題に強い弁護士に相談することが重要です。

そうすることで、不利な労働審判の結果や、裁判の判決に至ることを防ぐことが可能となります。

また、できることならそもそもこのような問題が具体的に生じる前から、労務問題について詳しい弁護士との間で顧問契約を交わしておくことをお勧めしておきます。

そうすることでいつ、解雇の問題が生じてもすぐに十分なアドバイスを受けることが可能となるからです。

さらに、労働法や解雇に関するセミナーを受けることも有効です。こうしたセミナーでは、最新の法律改正や判例に基づいた実務的なアドバイスを受けることができ、企業経営者としての法務の知識を向上させることができます。

架け橋法律事務所の顧問契約

当事務所では、顧問契約について3つのプランを設定していますが、いずれのプランであっても試用期間中の解雇に関する個別相談がいつでも可能です。

また、試用期間中の解雇に関する具体的な紛争に至った場合には、スタンダードプラン、プレミアムプランにおいてそれぞれ弁護士費用の割引があります。

さらに、スタンダードプラン、プレミアムプランにおいては、試用期間中の解雇に関連するセミナーについても、講師料なしで実施が可能です。

以上のプランの詳細は以下のページからご参照ください。

7 まとめ

試用期間中であっても、解雇には慎重な対応が求められます。

法に則った正確な手続きと、労働者への誠実な説明を心がけることで、トラブルを未然に防ぎ、企業の信用を守ることができます。

また、労働者に認められる権利を正しく理解し、それを侵害しない形で手続きを進めることが、企業にとっても非常に重要です。

一方で、企業側にも正当な採用と解雇を行う権利があるため、そのバランスを保つことがリスク回避につながります。

今回の記事では、試用期間中の解雇についてのポイントを一覧でご紹介しましたので、ぜひ社内制度の見直しや、制度構築の参考にしてください。

さらに詳しく知りたい方は、岡山香川架け橋法律事務所のホームページもご覧ください。

岡山香川架け橋法律事務所では、企業向けの労務管理サポートや、解雇手続きに関する相談サービスも提供しております。

全国からのご相談にも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
労使問題を始めとして、契約書の作成やチェック、債権回収、著作権管理、クレーマー対応、誹謗中傷対策などについて、使用者側の立場から具体的な助言や対応が可能。

常に冷静で迅速、的確なアドバイスが評判。
信条は、「心は熱く、仕事はクールに。」

*近場、遠方を問わずZOOM相談希望の方はご遠慮なくお申し出ください。


執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ

2002年 早稲田大学法学部卒業

2006年 司法試験合格

2008年 岡山弁護士会に登録

2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所

2015年 弁護士法人に組織変更

2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更

2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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