キャラクターケーキはどこまで許されるのか?~著作権侵害の成否について~

1 キャラクターケーキと著作権

⑴キャラクターケーキとは何か

キャラクターケーキとは……

アニメなどのキャラクターをデザインしたりプリントしたりしてケーキにするもの

です。

その技術の進化は凄まじくハイクオリティのキャラクターケーキが多数で回っています。

当然、子どもが喜ぶことから親がケーキ屋さんに頼むことが多く、ケーキ屋さんとしても通常のケーキよりも高単価で売れるため取り扱う店舗も少なくありません。

しかし、このキャラクターケーキについて、どこまでが法的に許されてどこからが違法なのか分かっているようで分かっていない方が多く、今回はこの件について解説をしていきます。

⑵キャラクターケーキとケーキ屋さんの著作権侵害

まず、このキャラクターケーキには、美術の著作物としてキャラクター製作者に著作権が成立するところ、そうするとキャラクターケーキについても著作権侵害(複製権)が成立することとなります。

したがって、キャラクターケーキについては、ケーキ屋さんの方で著作者からの利用許諾を得ていない限り、これを制作した時点で著作権侵害が成立してしまうので注意が必要です。

実際、鬼滅の刃のキャラクターケーキを製造販売したケーキ職員が、著作権法違反(複製権侵害)で書類送検されるという事件がありました。

人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターを描いたケーキを無断で作って販売したとして、警視庁向島署は9日、東京都渋谷区のケーキ職人の女(34)を著作権法違反(複製権侵害)容疑で東京地検に書類送検した。

(読売新聞オンライン2021/11/09 19:03)

したがって、キャラクターケーキで商売をしようとか、それらで儲けようと考えると、このような刑事事件になり得るので止めておいた方が無難です。

この点、そうは言っても多くのケーキ屋さんでキャラクターケーキをいまだに販売しているではないかとの質問があるかと思います。

これは、実際にはほとんどのケーキ屋さんで許可なく製造販売をしており、他方で、著作権者としても全国に無数にあるケーキ屋さんに個別に権利侵害を理由とした販売差し止め損害賠償刑事告訴をすることが現実的でないために、いわば手付かずになってしまっているだけだと思ってください。

(3)キャラクターケーキを購入した側の責任について

また、キャラクターケーキを作ったケーキ屋さんだけでなく、これを注文した側についても法的な責任が生じないかが気になる所です。

この点、著作権侵害は、民事上の責任刑事上の責任の両方があり得るところ、刑事上の責任は故意犯罪を前提としていることから、注文した側にまで故意責任を問うことは通常考え難いといえます。

他方で、民事上の責任についてですが、キャラクターケーキを販売しているケーキ屋さんに、「このキャラクターケーキは著作権者の利用許諾を得ているのですか?」と確認をするという意味での注意義務があり、これを怠った以上は過失が肯定されてしまうと思います。

したがって、過失による不法行為として民事上の責任が問われる余地は、理屈の上では否定しきれません。ただし、いまだに全国で許可なくキャラクターケーキが販売されている現状に照らすと、著作権者がキャラクターケーキの販売側に文句を言うとか、損害賠償を求めるとかはあり得ても、これを購入した側にまで責任を追及することはほぼあり得ないと思います。

かといって、キャラクターケーキを買っていいのかと聞かれれば、それは絶対に止めるべきです。

実際に著作者が権利行使をしてこないだけであり、許諾なきキャラクターケーキが他人の著作権という権利を侵害した上で成り立っているものであることには変わりないからです。

言い換えると、「子どもが喜んでいるそのキャラクターケーキは他人の権利侵害の上に成り立っている違法なケーキなのだ」ということをご理解いただきたいと思います。

当然、違法なことをしてもいいと教える親はいないでしょうし、自分の子どもが喜ぶなら違法なことを進んでやる親もいないはずです。

なので、キャラクターケーキが違法だと分かった以上、これを購入することは即刻控えるべきことなのです

2 違法なキャラクターケーキとそうでないキャラクターケーキについて

以上とは異なり、ネット上で調べてみたところ、いわゆる他人の著作物でないキャラクターを製造し販売するケーキ屋さんも存在すると分かりました。

これは要するに、アニメなどのキャラクターではなく、当該ケーキ屋さんが独自で描くキャラクターをケーキにして販売するものです。

他にも、子どもが書いた絵をトレースしてケーキに仕上げるというものもありましたが、この場合には著作権者が当該子どもなので、当然、何ら権利侵害にもなりません

したがって、このような方法でいろいろなキャラクターをデザインしたケーキを販売することはまったく問題がありません。

3 自分でキャラクターケーキを作ることの当否について

では、上記とは異なり、自分でキャラクターケーキを自宅で作り、家族や友人と食べることの当否はどうでしょうか。

この点、著作権法には著作権の制限規定があり、私的使用のための複製(著作権法30条)に該当するので問題ありません。

ただし、作ったケーキを写真に撮ってSNSなどにアップをするとこの私的使用のための複製ではなく、公衆送信権(著作権法23条)違反の問題が生じるので注意が必要です。

4 キャラクターケーキと著作権侵害のまとめ

以上のように

①許諾なくキャラクターケーキを製造販売することは著作権侵害となる

②これを購入する側の責任も理屈上はあり得る

③自分で作って個人的に楽しむ範囲であれば問題ない

という結論になります。


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
労使問題を始めとして、契約書の作成やチェック、債権回収、著作権管理、クレーマー対応、誹謗中傷対策などについて、使用者側の立場から具体的な助言や対応が可能。

常に冷静で迅速、的確なアドバイスが評判。
信条は、「心は熱く、仕事はクールに。」

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執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ

2002年 早稲田大学法学部卒業

2006年 司法試験合格

2008年 岡山弁護士会に登録

2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所

2015年 弁護士法人に組織変更

2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更

2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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