解雇の基本知識|解雇の種類ごとに専門弁護士が詳細解説

弁護士による労働組合対応、団体交渉対応について

このコラムについて

企業経営上、経営者は従業員を採用、雇用し、労働契約の内容に従って労務を提供してもらいます。そして、労務の提供に対して賃金を支払います。

しかし、雇用した従業員の能力不足や体調不良による休業、非違行為や人員整理の必要性等から解雇の選択をしなければならないことが生じえます。

そうした問題に直面した際に、企業としていつでも自由に解雇ができればそれに越したことはありません。

しかし、労働契約は、労働者の生活の資本であり、いつでも自由に解雇が許されるとなると従業員の生活は守られません。

そのため、解雇の種類に限らず、日本の労働法や裁判例では解雇に際して一定の法規制を及ぼし、安易な解雇を禁止しています(このことを「解雇権濫用法理」といいます)

仮にこの法規制に反して解雇をすれば、後に解雇の効力を争われたり、敗訴等の結果、バックペイの負担を強いられたりすることが多々あります。

そのため、企業経営者はこの法規制を受け、

①解雇の種類を正しく理解すること

②状況に応じた解雇を選択すること

③解雇の際には後にその効力を否定されないように準備すること

が大切です。

そこでこのコラムでは、①解雇の種類を正しく理解することを主たる目的とした情報を整理して詳しくまとめました。

解雇についてお悩みの際にはまずはこのコラムをよくご確認ください。

ではさっそく見ていきましょう。

1 解雇の種類について

⑴ そもそも「解雇」とは何か?

解雇とは、使用者が労働契約を一方的に終了させる行為を指します。

解雇は労働契約の即時終了を意味するので、労働者の生活に大きな影響を及ぼすことは冒頭でも説明したとおりです。

加えて、日本では解雇についてまだまだ否定的なイメージがあり、解雇をしたこと自体が企業の評判に直結しかねない重大な決定となります。

ましてや、後に解雇の効力が否定されれば企業の評判はさらに落ちていくことでしょう。

⑵ 解雇にはどのような種類があるか?

企業経営者が理解しておくべき「解雇の種類」には、以下の4つのパターンがあります。それぞれの特徴を項目ごとに整理しておきます。

普通解雇

普通解雇は従業員の勤務態度不良、能力不足、病気など心身の不調、無断欠勤の多発(時間管理の不行き届き)などを理由とする解雇であり、企業経営において頻繁に問題となります。

就業規則に普通解雇事由が定められていることが通常であり、普通解雇を検討する際には就業規則の定めに照らして普通解雇事由を満たすか否かを検討することとなります。

もっとも、普通解雇も、客観的な合理性と社会的相当性がなければ不当解雇と判断される可能性が高いため、十分な証拠と経緯の整理が欠かせません。

なお、就業規則自体に不足があるといけませんから、その作成と適宜の見直しはかなり重要です。

この点については別のページに詳細を紹介していますのでそちらをご参照ください。

また、最近とてもご相談の多い、うつ病を理由とした欠勤や休職が続く従業員に対する解雇の可否については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

呉弁護士のワンポイントアドバイス

弁護士 呉裕麻

普通解雇は、従業員による労務提供不能の場合に選択すべき解雇です。能力不足、体調不良、成績不良などが典型です。いずれの場合も程度問題となることがあるので、どの程度のケースであれば普通解雇が可能か、慎重な見極めが重要です。

また、労災事故による療養中の解雇には一定の制限が及ぶことにも注意が必要です。

労働基準法
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間・・・は、解雇してはならない。

懲戒解雇

次に、懲戒解雇は横領、重大な服務規律違反、度重なる職場秩序違反など、企業秩序を著しく乱す行為に対して科される最も重い処分です。

懲戒解雇の場合も普通解雇と同様に、就業規則に懲戒事由があらかじめ定めされていること、懲戒解雇の手続が適正に行われていることが必須条件です。

普通解雇と同様に解雇権濫用法理に従って有効性が判断されます。

そして、懲戒解雇は従業員に対する制裁、懲罰としての意味も持つことから、普通解雇以上にその判断は厳しいものがあります。

結果、裁判で無効とされるリスクもあるため、懲戒解雇を検討、実行する際には事前に弁護士に確認することが望ましいでしょう。

なお、これもまた最近相談の多い問題社員やローパフォーマーに対する対処方法や解雇の可否等については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

さらに、従前からとても相談の多い、社員による横領を理由とした懲戒解雇については別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

呉弁護士のワンポイントアドバイス

弁護士 呉裕麻

懲戒解雇は、従業員に責めるべき事由、責任がある場合に選択されることが通常です。能力不足云々の普通解雇とは異なり、かりに労務提供能力はあっても、非違行為がある場合には懲戒解雇が可能です。

非違行為としては、パワハラ、セクハラ、横領、刑事事件などが多いです。

また、懲戒解雇に先立ち、解雇事由の調査のために当該従業員を出勤停止にすることなども往々にとられる手段です。

整理解雇

整理解雇は経営不振や事業縮小など、企業側の業務上、経営上の必要性に基づく人員削減の一環として行われます。

しかし、裁判所は整理解雇に対して厳格な判断を行っており、以下の4要素が判断のメルクマールとされています。

したがって、会社の部門閉鎖、事業所閉鎖などをしたいからといってすぐに解雇が可能となる訳ではないのでご注意ください。

・人員削減の必要性

・解雇回避努力

・人選の合理性

・手続の妥当性

呉弁護士のワンポイントアドバイス

弁護士 呉裕麻

整理解雇は、普通解雇や懲戒解雇と異なり、従業員側の事情や責任の有無等は問わずに解雇を可能とするものです。もっぱら企業側の事情による解雇です。

諭旨解雇

諭旨解雇は、懲戒解雇に相当するような重大な非違行為(ハラスメント、経歴詐称、長期の無断欠勤など)があった場合でも、従業員の反省の態度が見られるなど、情状酌量の余地がある場合に選択される解雇の方法です。

従業員の態度やこれまでの長年の功労などを踏まえて温情的に懲戒解雇を避けるための方法です。

諭旨解雇の場合であっても就業規則に規定を設けること、不当解雇とならないように諭旨解雇事由を満たすことは必須の前提となります。

呉弁護士のワンポイントアドバイス

弁護士 呉裕麻

諭旨解雇は懲戒解雇の派生形のようなものです。原則は懲戒解雇が相当だけれども、これまでの功績がある従業員に向けて、懲戒を避ける温情的解雇です。

⑶ 試用期間中の解雇について

以上の解雇4類型とは別に、当該従業員を採用後、試用期間中に解雇を検討する場合があります。

この試用期間中の解雇は昨今、相談が増加しており、紛争に発展するケースもまた増加しています。

その理由は様々なところですが、一つには昨今の人手不足による性急な人材採用にあると言えます。

そうした事情から採用した従業員について、期待した能力欠け、試用期間中に解雇を選択せざるを得ないことが生じています。

そして、試用期間中に解雇をする場合には多くは普通解雇によることになります。ただし、試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも若干、緩やかに判断されることがあるのでその点、別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

呉弁護士のワンポイントアドバイス

弁護士 呉裕麻

試用期間中の解雇は、通常の解雇よりも容易であると言われがちですが、あくまで「解雇」であることに変わりはなく、解雇権濫用法理の規制が及ぶことには十分な注意が必要です。

そのため、単に気が合わないとかの事情で解雇することには注意が必要です。 したがって、解雇によらずに辞めてもらうことが可能であればそのような自主退職を薦めることも大切です。

2 普通解雇の詳しい特徴について

⑴ 普通解雇の定義と要件

普通解雇は、労働者の勤務態度の不良や能力不足、健康上の理由など、企業経営上や業務運営上の支障を理由として行われる解雇の種類を指します。

普通解雇は懲戒解雇のような制裁処分ではなく、経営者が通常の雇用関係維持を困難と判断した場合に選択される措置です。

しかし、その判断は経営者の裁量に任されているわけではなく、法律上厳格な要件を満たさなければなりません。

具体的には、普通解雇が有効とされるためには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。

例えば、長期にわたる無断欠勤や業務能力の著しい不足が継続している場合などが典型的な例です。

ただし、単なる経営者の主観的評価や一時的な不調を理由とするだけでは、裁判所において不当解雇と判断される危険性が高いといえます。

また、解雇に先立ち注意指導や配置転換といった改善の機会を与えることも重要です。

突然の解雇通知では「解雇回避努力が尽くされていない」と判断される恐れがあり、企業側にとって不利な結果を招きかねません。

経営者にとっては、法的リスクを回避しつつ円滑に人事判断を行うため、解雇の種類ごとの特徴を理解し、適切な対応をとることが必要です。

⑵ 普通解雇の手続き

普通解雇を行う際には、経営者が独断で進めるのではなく、労働法上定められた手続きを踏む必要があります。

まず前提として、普通解雇においても「客観的合理性」と「社会的相当性」が不可欠です。そのため、解雇前に改善指導や配置転換など、労働者に改善の機会を与えることが強く求められます。

実務上は、①業務不良や勤怠不良の事実を具体的に記録し、②複数回にわたり注意・指導を行い、その結果を文書化しておくことが重要です。そのうえで改善が見られない場合にのみ解雇を検討する流れが適切です。

また、労働基準法第20条に基づき、少なくとも30日前に解雇予告を行うか、30日分以上の平均賃金を支払う「解雇予告手当」が必要となります。

さらに、解雇通知書の交付により、解雇理由を明確に伝えることも重要です。

理由を曖昧にしたままでは、後に労働者から不当解雇として争われる可能性が高まります。

現在の裁判実務では、解雇手続きの適切さが厳しく判断され、安易な解雇は禁止されるため、企業経営者としては慎重な対応が欠かせません。

以上の普通解雇について、懲戒解雇と合わせてその選択を行う際のデメリットをさらに詳細に別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

3 懲戒解雇の詳しい特徴について

⑴ 懲戒解雇の定義と要件

懲戒解雇は、解雇の種類の中でも最も重い処分に位置付けられ、労働者にとっては退職金不支給や再就職への深刻な影響を伴うため、企業経営者にとっても慎重な判断が必要です。

懲戒解雇の理由として典型的なのは、横領・窃盗・重大な経歴詐称・長期無断欠勤・職場秩序を乱す行為など、企業秩序を著しく侵害する行為です。

これらは就業規則に具体的に規定されている必要があり、規定にない理由で懲戒解雇を行うと、不当解雇として無効とされるリスクがあります。

⑵ 懲戒解雇の手続き

手続きとしては、まず就業規則に基づき懲戒事由が存在するかを確認し、事実調査を徹底的に行います。

その後、本人への弁明の機会を保障し、公平な手続を経ることが不可欠です。

また、懲戒解雇は社会的影響が大きいため、裁判所は特に厳格な判断を下します。

したがって、解雇通知書に懲戒理由を具体的に記載すること、証拠を整理しておくことが重要です。

懲戒解雇は経営上やむを得ない措置である一方、リスク管理を誤れば企業の信用失墜や損害賠償請求に発展しかねません。そのため、普通解雇以上に慎重な検討が必要です。

4 懲戒解雇と普通解雇の違い

普通解雇は、労働者の労務提供能力を理由に行われることが通常で、能力不足、勤務態度不良、業務命令違反などが典型例です。

一方、懲戒解雇は、従業員の故意または重大な過失による不正行為や職場秩序を著しく乱す行為に対して科される懲戒処分の一つであり、最も重い解雇形態と位置付けられます。

最大の違いは、その性質と労働者への影響です。普通解雇はあくまで雇用契約を維持できない合理的理由に基づく措置であり、退職金の支給が行われるのが通常です。

これに対して懲戒解雇は制裁的な性格を持ち、退職金の不支給や再就職における大きな不利益を伴うことが多く、裁判所もその有効性を極めて厳格に審査します。

また、手続面でも違いがあります。普通解雇では合理的理由と社会的相当性が求められるのに対し、懲戒解雇ではさらに就業規則に懲戒事由が明確に規定され、本人に弁明の機会を与えるなど、公平性の高い手続が不可欠です。

経営者としては、上記の解雇の種類ごとの違いを正しく理解し、誤った対応で不当解雇と認定されないよう慎重に進める必要があります。

以上の懲戒解雇について、普通解雇と合わせてその選択を行う際のデメリットをさらに詳細に別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

5 整理解雇の詳しい特徴について

⑴ 整理解雇の定義と要件

整理解雇とは、企業の経営上の必要から人員削減を目的として行われる解雇の種類です。

労働者に直接的な責任がない場合に適用されるため、裁判所は特に厳格にその有効性を判断します。一般的に「整理解雇の四要件」と呼ばれる基準が存在し、経営者はこれを満たすことが求められます。

人員削減の必要性

経営不振や事業縮小など合理的な理由が存在しなければなりません。

解雇回避努力義務

配転や出向、希望退職募集など他の手段を尽くしたかが問われます。

人選の合理性

勤続年数や職務遂行能力など明確かつ公平な基準で対象者を決定する必要があります。

手続の妥当性

労働組合や従業員への説明・協議を十分に行い、透明性を確保することが重要です。

手続に不備があれば、たとえ経営状況が厳しくても不当解雇と判断されるリスクがあります。経営者としては、整理解雇を進める際に法的要件を慎重に確認し、専門弁護士の助言を得ながら進めることが望まれます。

⑵ 整理解雇における注意点

整理解雇は、企業の経営上やむを得ない場合に行われる解雇の種類であり、労働者側に責任がないことから、特に慎重な対応が求められます。

注意すべき点として第一に挙げられるのは「解雇の必要性」を明確に説明できる資料の準備です。

経営状況の悪化や人員削減の合理性を客観的に示さなければ、後に不当解雇として争われるリスクがあります。

次に「解雇回避努力」の実施です。配置転換や一時的な労働時間削減、希望退職の募集など、他の選択肢を真剣に検討し尽くしたうえで整理解雇を選んだ事を示す必要があります。

また「人選の合理性」も重要で、特定の従業員に偏った判断を下さず、明確な基準に基づいて対象者を選定することが不可欠です。

さらに「手続の公正さ」として、従業員や労働組合との十分な協議や説明を行い、納得感を醸成することが求められます。

6 諭旨解雇の詳しい特徴について

⑴ 諭旨解雇の定義と要件

諭旨解雇とは、懲戒解雇に相当する重大な非違行為があったものの、本人に一定の猶予を与える形で退職を促す解雇の種類を指します。

形式上は「自己都合退職」として処理されることも多く、解雇予告手当や退職金が支払われるケースもあります。

そのため、懲戒解雇よりも従業員にとって不利益が軽減される点が特徴です。

しかし実質的には厳しい処分であり、労働者の経歴や再就職活動に大きな影響を与える可能性があるため、適用にあたっては慎重な判断が求められます。

適用例としては、横領や背任など企業秩序を大きく損なう行為があったが、長年の勤務実績や本人の反省の度合いを考慮して「即時の懲戒解雇は避ける」場合などが挙げられます。

また、企業側としては社会的信用や社内規律の維持を優先しつつ、従業員に最低限の退職条件を残すことで紛争リスクを抑える狙いもあります。

ただし、諭旨解雇を行う際にも就業規則に基づく明確な根拠が必要であり、手続きの透明性が確保されなければ不当解雇と判断される危険があります。

経営者にとっては「懲戒解雇と諭旨解雇の線引き」を誤らないことが極めて重要です。

⑵ 諭旨解雇の手続き

諭旨解雇の手続きとしては、まず就業規則に諭旨解雇の規定を明記しておくことが前提となります。

次に、従業員に対して非違行為の内容を具体的に伝え、弁明の機会を付与することが不可欠です。

さらに、懲戒委員会や社内の意思決定機関による検討を経て、諭旨解雇を選択する合理性を明確化することが求められます。

注意点としては、従業員の同意ないし合意を得る際に退職届の提出を強制するような行為は「退職強要」と評価され、無効や損害賠償請求につながるリスクがあります。

また、退職金の取扱いや退職証明書の記載内容についてもトラブルの火種となるため、法令や判例に沿った対応が不可欠です。

経営者としては、懲戒解雇と諭旨解雇の線引きを明確にし、客観的かつ合理的な理由と公正な手続きを整えることが、後の紛争回避に直結します。

なお、退職勧奨の際の注意点を別のページに詳細を説明していますのでそちらをご参照ください。

7 解雇に関する法規制について

⑴ 労働契約法と解雇の関係

企業が従業員を解雇する場合、必ず意識すべき法律の一つが労働契約法です。

同法第16条では

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、かつ社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする

と明記されています。

つまり、企業経営者が解雇を検討する際には、合理的な理由と社会的相当性が求められるのです。

合理的な理由には、従業員の勤務態度の不良や能力不足に基づく普通解雇、会社の経営悪化による整理解雇、重大な非違行為による懲戒解雇などが挙げられます。

これらは「解雇の種類」として整理されますが、いずれの場合も形式的な理由付けだけでは不十分であり、具体的な証拠や手続の適正さが判断基準となります。

また、解雇に至るまでの経緯として、指導・改善の機会を与えたかどうか、従業員の不利益と企業の必要性を比較衡量したかどうかも重要です。

これらが欠けていると、後に労働審判や裁判で解雇無効と判断される可能性があります。

企業にとって解雇は最終手段であり、その適法性が厳格に問われる領域です。経営者は労働契約法を基盤として、解雇の種類ごとに適切な対応を講じることがリスク回避につながります。

⑵ 就業規則における解雇の規定

企業が従業員を解雇する際には、就業規則における解雇条項の整備と適用が極めて重要です。

労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては就業規則の作成・届出が義務付けられており、その中には「解雇の事由」を明記しなければならないと規定されています。

つまり、企業経営者は就業規則に解雇の種類や要件を明確に示し、従業員に周知する責任を負っています。

具体的には、勤務態度の不良や能力不足を理由とする普通解雇、経営上の必要性に基づく整理解雇、重大な規律違反を理由とする懲戒解雇など、解雇の種類ごとに就業規則に事由を列挙しておくことが必要です。

規定があいまいであったり、従業員に周知されていなかったりした場合、解雇の有効性が後に争われるリスクが高まります。

また、就業規則に記載があっても、それだけで解雇が正当化されるわけではなく、労働契約法や判例に基づく合理性・社会的相当性の審査を経る必要があります。

そのため、解雇を検討する経営者は、就業規則を単なる形式的な文書として扱うのではなく、実務上も適切に機能させることが肝要です。

8 解雇の手続きについて

企業が従業員を解雇する際には、適正な手続きを踏まなければ後に無効と判断されるリスクが高まります。

まず必要となるのは、就業規則に定められた解雇事由に該当するかの確認です。解雇の種類によって要件は異なるため、経営上の必要性や従業員の非違行為の内容を慎重に検討する必要があります。

次に、従業員への事前の指導・改善の機会を設けることが重要です。特に普通解雇や諭旨解雇の場合には、いきなり解雇を通知するのではなく、注意・指導・配置転換といった段階を経て「最後の手段」として解雇を選択したことを示すことが求められます。

さらに、解雇を行う場合には、解雇理由証明書の交付義務(労働基準法第22条)があり、従業員から請求された場合は速やかに書面で理由を提示する必要があります。

また、30日前の解雇予告または予告手当の支払いも法的義務であり、怠ると無効または損害賠償の対象となり得ます。

最終的には、解雇通知を行う前に、社内手続きや証拠の整備を行い、労働契約法や判例に照らして合理性・相当性を確保することが不可欠です。

経営者にとって解雇は重大な経営判断である一方、トラブルの発端となるリスクも高いため、事前に専門弁護士に相談し、解雇の種類ごとの適法性を確認することが推奨されます。

9 解雇と失業保険

⑴ 解雇後の失業保険の受給条件

従業員を解雇する際、経営者として注意すべき点の一つが、解雇された従業員がその後に受給できる失業保険(雇用保険の基本手当)です。

失業保険は労働者の生活を支える制度であると同時に、解雇の種類や手続きが不適切であれば、会社側の対応がトラブルに発展するリスクもあるため理解が不可欠です。

失業保険を受給するためには、まず雇用保険に加入していたことが前提となります。

そのうえで、離職日の直前2年間に通算12か月以上の被保険者期間があることが基本的な条件です。

解雇による離職の場合は「会社都合」として扱われ、自己都合退職よりも給付制限が短縮される、または待機期間後すぐに受給が開始されるなど、従業員にとって有利な取り扱いがなされます。

ただし、懲戒解雇のように重大な労働者側の責任が明確なケースでは、ハローワークが「自己都合退職」と同様に判断することがあり、受給条件が厳しくなる場合があります。

そのため、経営者としては解雇理由を就業規則や事実に基づいて適切に整理し、離職票に正確に記載することが重要です。 解雇後の保険制度に関するご不安があれば、ぜひ専門弁護士へご相談ください。

⑵ 失業保険申請の手続き

失業保険を受給するためには、まず会社が離職票を作成し、従業員に交付する必要があります。

この離職票には解雇の種類や理由が明確に記載され、従業員がハローワークへ提出する際の基礎資料となります。

従業員は離職票や雇用保険被保険者証、本人確認書類などを揃えてハローワークに申請し、求職の申込みを行います。

その後、待機期間を経て受給が開始されますが、解雇理由によっては給付制限がなく速やかに支給が開始されるケースもあります。 経営者としては、解雇の種類に応じて必要な書類を速やかに発行する体制を整えておくことが、不要なトラブルを防ぎ、信頼関係を維持するうえで不可欠です。

10 解雇を巡る紛争と弁護士相談のメリットについて

⑴ 解雇紛争と法律相談の重要性

企業が従業員を解雇する場合、手続きや理由の正当性をめぐりトラブルに発展することが少なくありません。

解雇の種類ごとに必要な要件や法的基準が異なるため、経営者としては適切な判断を下すことが難しい場面が多いのが実情です。

そのため、万一トラブルが生じた際には、速やかに適切な相談先へアクセスすることが重要です。

まず、行政機関としては労働局内の「総合労働相談コーナー」や「労働基準監督署」があります。

これらは無料で利用でき、解雇の有効性や労働基準法に違反していないかといった初期的な助言を受けることが可能です。

⑵ 弁護士相談の必要性

以上の行政相談は、あくまで一般的な案内にとどまることが多いため、企業としてのリスクマネジメントには十分ではありません。

経営者にとってより実践的かつ戦略的な対応を図るためには、労務問題に精通した弁護士への相談が不可欠です。

労働問題の専門弁護士は、解雇の種類ごとの適法性を検討し、証拠整理、従業員対応、万一の訴訟対応まで一貫してサポートすることができます。特に企業規模が大きくなるほど、労働紛争はブランドや経営に直結するため、初期段階での相談が被害拡大の防止につながります。

岡山香川架け橋法律事務所では、企業経営者の立場に立った解雇問題の予防・解決を重視し、迅速かつ実効性のある助言を提供しています。解雇に関する不安や疑問が生じた際は、早めに専門家へご相談ください。

特に、懲戒解雇や整理解雇では従業員側から争われるケースが多く、企業にとって重大な経営リスクとなり得ます。

したがって、専門の弁護士による解雇相談は非常に重要です。

⑶ 弁護士相談のメリットについて

弁護士に相談するメリットは多岐にわたります。

まず、解雇の種類ごとの適法性を検証し、必要な証拠の整理や手続の適正化を図りやすくすることができます。

また、従業員への通知文書や離職票の作成を法的に適切に行うことで、後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

さらに、紛争が発生した場合でも、裁判や労働審判での代理対応により企業の立場を守ることができます。

加えて、弁護士は労務管理全般のアドバイスも提供できるため、今後の解雇に伴うリスクを低減させる方針策定や就業規則の見直しにも役立ちます。

解雇は経営において避けられない場面もありますが、専門家と連携することで法的リスクを最小限に抑え、円滑な労務運営を実現することが可能です。 岡山香川架け橋法律事務所では、企業経営者の視点に立ち、解雇の種類ごとの対応からトラブル防止策まで幅広く支援、受付ています。

⑷ 弁護士費用について

相談料等について

解雇紛争を相談する際には、個別のご相談をご利用いただくことも可能です。

その場合には30分あたり5,500円のご相談料をお願いしています。

これと別に顧問契約を締結されている顧問先様からのご相談は、顧問料の範囲内で個別の労務相談、解雇相談が可能です。

柔軟にいつでも、継続的に相談が可能となることから顧問契約のメリットは大きいものと言えます。

個別の顧問契約のプランは以下のとおりです。

解雇紛争の弁護士費用について

また、解雇が具体的な紛争に至った際の弁護士費用については以下の表をご参照ください。詳しい費用のページは別のページに詳細を説明していますのでそちらもご参照ください。

解雇
労働問題における解雇の弁護士費用です。

執筆者;弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ

2002年 早稲田大学法学部卒業

2006年 司法試験合格

2008年 岡山弁護士会に登録

2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所

2015年 弁護士法人に組織変更

2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更

2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所


この記事を書いた弁護士
代表弁護士 呉 裕麻(おー ゆうま)

出身:東京  出身大学:早稲田大学
労使問題を始めとして、契約書の作成やチェック、債権回収、著作権管理、クレーマー対応、誹謗中傷対策などについて、使用者側の立場から具体的な助言や対応が可能。

常に冷静で迅速、的確なアドバイスが評判。
信条は、「心は熱く、仕事はクールに。」

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執筆者:弁護士 呉裕麻(おー ゆうま)

1979年 東京都生まれ

2002年 早稲田大学法学部卒業

2006年 司法試験合格

2008年 岡山弁護士会に登録

2013年 岡山県倉敷市に岡山中庄架け橋法律事務所開所

2015年 弁護士法人に組織変更

2022年 弁護士法人岡山香川架け橋法律事務所に商号変更

2022年 香川県高松市に香川オフィスを開所

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